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シンとレンの十二の冒険  作者: くらいね
第三章 危獣編
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199話 危獣黒狼ゼルク 前編

「なんだ…」


 シン達の目の前には全身を黒い毛で覆われた狼の魔物がいた。


「お前が黒狼ゼルクだな?」


「グルル」


 シン達に吸い寄せられるようにやってきたゼルクはゴウキを睨み付ける。


「まさか街の中にまで来るとはな」


「ここでやんのか?」


「それしかないだろ」


 周囲には普通の民家が立ち並ぶ。

 そして、まだ一般人がそこら中にいるのだ。

 ここで戦うとかなりの被害があると想像できる。


「まずは時間稼ぎだな。避難できるだけの時間を稼ぎたい」


 と、その時、ゼルクの体から黒い炎が漏れ始める。


「やる気満々か」


「ガル!」


 ゼルクはゴウキへ噛み付く。

 と、ゴウキは自分の目の前に盾の神器を構える。

 そして、


「吹き飛べ」


 ゼルクが盾へ噛み付くと、その大きな体を吹き飛ばした。


「こんぐらい単純ならいいんだが、そうもいかねえだろうな」


 その時、吹き飛ばされたゼルクが一直線にゴウキを狙う。


「早いな」


 次の瞬間、ゼルクは再びゴウキへ噛み付く。

 ゴウキはそれを同じく盾で防ごうとした瞬間、ゼルクはそれを分かっていたかのようにふっと地面を蹴ると爪でゴウキの首元目掛けて突き刺した。


「っ!」


 それに気づいたゴウキは持っていた刀で何とか防ぐ。

 と、ゼルクは口を大きく開ける。


「まずいな。グラート!」


「お、おう!」


 エルフィンとグラートがゼルクを同時に攻撃する。

 ゼルクは距離をとってそれを躱すのだが、それと同時に黒炎のブレスを吐いた。


「私が」


 レンがリナザクラでそれを反射させる。

 黒炎はゼルクへ戻っていく。

 が、ゼルクは特に躱すこともなくそのまま自分の跳ね返されたブレスを喰らう。


「その神器だと反射できるのか。なるほどな。かなり相性は良さそうだな」


 と、シンがゼルクへサニアの斬撃を飛ばす。

 しかし、その攻撃は簡単に避けられる。


「まずはアイツの動きを止めるべきだ」


「ああ」


「なら私が動かすからその隙を狙って」


 レイオーネが言うと新しく手に入れた銃剣の神器を構える。


「お前使い方分かったのか?」


「うん。任せて」


「そうか、分かった。ならレイオーネとシン、サレサでアイツの動きを制限してくれ」


「「分かった」」


「クア」


「よし、行くぞ!」


 ゴウキが走り出すとエルフィンとグラートも走り出す。


「私もお供します」


「私はみんなを守るね」


 コナンはゼルクへ向かい、レンはシンとサレサとレイオーネを守る為に前でリナザクラを構える。

 すると、


「私もみんなの為に…」


 そう言ってレイオーネが片目を閉じると左手で銃剣をゼルクへ向ける。

 と、引き金を引いた瞬間、バンという発砲音がなる。

 リボルバー式の銃剣の衝撃で自然と銃口が上を向く。


「ガルッ」


 ゼルクの体が何かに弾かれたように少し動いた。

 打たれた本人は何が起こったのか分からない様子で戸惑っている。

 その隙にゴウキ、エルフィン、グラートが同時に攻撃を仕掛けた。

 が、しかし、


「アオーーーウ」


 ゼルクは遠吠えと共に体から黒炎を放ちゴウキ達の攻撃から自分を守る。


「これじゃ近付けねえぞ」


「触れられないのは厄介だな」


「ああ」


(レイオーネのあの神器。確か銃弾がなかった筈だけど一体どういう神器なんだ?)


「なら私が…」


 そう言うとレイオーネが再びゼルクへ銃口を向ける。

 と、ゼルクも警戒しているか体を落とし、じっとレイオーネを睨み付ける。


(遠距離攻撃なら俺もできる。三人でやるか)


「サレサ、レイオーネ。一気にやるぞ」


「うん」


「クア」


 それからシンとサレサは同時に攻撃する。

 サニアの斬撃と電撃がゼルクを襲う。

 それを見たゼルクはその場から離れようとして、しかし、銃声と同時に体のバランスを崩しそのままシンとサレサの攻撃をまともに喰らっていた。


「よし」


「後もう一発…」


 レイオーネは間髪入れずにもう一度構える。

 そして、引き金を引くと同時に銃声がなると、次の時にはゼルクに命中していた。


(弾速が速すぎて見えない。打った時にはもうゼルクに当たってる)


 と、シンが感心していると、


「ガルルル」


 ゼルクの毛が逆立ち、明らかに戦闘体勢になっていた。

 かと思えば、その次の瞬間にはレイオーネの目の前で手を上に振り上げて襲いかかろうとしていたのだ。


「「「?!」」」


 皆が驚く中、ゼルクの鋭い爪がレイオーネ目掛けて振り下ろされる。


「早いのね」


 レイオーネはそれだけ言うと銃剣の剣の部分でゼルクの攻撃を受け止める。

 が、あまりにも強いゼルクの攻撃はレイオーネを吹き飛ばす。


「レイオーネ!」


「クア!」


 心配するみんなのことなど関係ないとゼルクはレイオーネだけを睨み付けると追い打ちでレイオーネ目掛けて駆け出す。


「力というよりもスピードがそのまま力になっている感じか…」


 ゴウキも駆け出すが、どう考えてもゼルクには追い付かない。

 と、その時、


「私はあなたを殺す為にここまで来た。だからもう手加減はしない。あなたの力に合わせる為に街を壊してでも…」


 レイオーネが吹き飛ばされた勢いを上手く受け流して地面へ着地すると何度目かになる引き金へ指を掛けた。

 そして、引き金を引くとバンという発砲音が鳴り響いた。

 と、ゼルクは蹴り上げられたかのように体が宙へ吹き飛ぶ。


「「「!?」」」


 その様子にみんなが驚いているとゴウキが一人だけゼルクへ追撃を仕掛けようと大剣を手に地面を蹴った。

 段々とゼルクへと近付くゴウキ。

 と、そんなゴウキに気が付いたゼルクが空中で体勢を変えるとゴウキの振り下ろした大剣に合わせるように噛み付いた。


「まるで人との戦い方を知ってるような動きだな!」


 ゴウキの力でゼルクは地面へと吹き飛ばされる。


「俺達も行くぞ」


「おう」


「あの銃の神器凄いね…」


「ああ」


(さっきとは比べ物にならない程の威力だった)


 と、地面へと叩き付けられたゼルクが起き上がる。

 そこにエルフィンとグラート、コナンが追い打ちを仕掛ける。

 ゼルクはそれを避けようと足を踏ん張って、しかし、その足を撃たれてバランスを崩しその場へ倒れた。


「今だああああ!」


 このチャンスを逃すまいと三人が同時に攻撃する。

 すると、グラートの戦斧は肉を切り裂き、エルフィンの刀は広く浅く切り付け、コナンはレイピアの刺突で毒に侵す。


「ガルルル」


 とゼルクは黒炎を纏いながら立ち上がる。

 かなり苛立っているのか全身から黒炎が溢れ出してくる。

 が、


「このチャンスを逃さねえぜ」


 ゴウキは黒炎など気にせずに突っ込んでいく。

 そして、ゴウキは全身を黒炎で燃やしながらも持っていた大剣でゼルクを切り付けた。

 ゼルクはそれが初めての経験だったのか固まったようにその攻撃を受けると大剣は大きくゼルクの体に傷を付けた。


「ガオウ!!!」


 ゼルクは噛み付きで反撃するが既にそこにはゴウキはいなかった。


「熱、熱、熱…!」


 ゴウキは急いで壺の神器を取り出す。

 と、壺の入口部分を自分の方へ向ける。

 次の瞬間、黒炎は見る見る壺の中へと吸い込まれていった。


「ふう…熱かったぜ」


「一人で無茶をするな…」


(そうだな。ゴウキ一人になんでも任せる訳にはいかない)


「サレサ、レイオーネ。俺達も仕掛けるぞ」


「クア」


「うん」


 と、その時、だった。

 ゼルクの体から黒炎が溢れ出ると、それが地面や周りの家へ飛び火していくのだ。


「何か今までと様子が違いますね」


「ああ…なんかしてくるつもりだな」


 と、そんなことを思っているとゼルクから黒炎が四方八方へ飛び散った。

 それによって周りは黒炎に包まれどんどん広がっいき、それはやがてシン達の逃げ場すら消した。


「黒炎で俺達を逃がさないつもりか」


「みたいだな」


「コイツを倒せす為にここまで来たんだから逃げる必要ねえだろ」


「ですが、この黒炎はどんどん広がっていきます。このままでは逃げ遅れた者が犠牲になってしまいます」


「なら、ゼルクと戦うのと街を守るので二手に分かれますか?」


「でもそんなことしたら戦力が減っちゃうよ?」


「そうだな。この街のことはこの街の人に任せて俺達は目の前の敵に集中すべきだろう」


「クア」


「…ならできるだけ早くコイツを片付けないとな」


 広がっていく黒炎と気が荒だっているゼルクを視界に捉えながらシンはそう言った。

見てくれてありがとうございます。

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