196話 十番目の神器
シン達は扉の空間から抜けるとしばらく一本道を進んでいた。
「俺の勘が言ってるぜ。後もう一波乱あってフロリアと会う。そんな気がするぜ」
「何を根拠に言ってんだ?」
「俺の今までの経験だ」
「もう一波乱か。その予想は外れて欲しいがな」
「ああ」
「でもこういう時の勘って当たりやすいよね」
「…そうだね。レイオーネもそういうなんとなく嫌な予感するな〜みたいなことあるの?」
レンが聞くとレイオーネは少し考え、
「今までずっと追われてきたからそういう勘は人一倍働くし、裏の社会で生きてると人を疑わないと生きていけないからそういうのは敏感になるかな」
「そっか…そうだよね…」
「……レンは優しいね」
「え?」
「レンだけじゃないけどサレサもシンもみんな優しい」
「そうかな…」
「うん。優しいよ。私にとってはね」
と、その時、サレサがレイオーネの肩に乗る。
「クア」
「……」
レイオーネは何も言わずにサレサの頭を撫でる。
(レイオーネも過酷な過去を持ってるからな。人の優しさに触れるのがこそばゆいのかもな)
「和んでるところ悪いがそろそろ新しい場所に出そうだ」
「だって」
「クア」
サレサはレイオーネの肩から降りる。
それからシン達は歩くと開けた場所に出た。
「ここは…」
そこは一面に様々な色の花が咲いた空間。
「随分広いな」
向こうが見えなくなるまで花畑がずっと続いている。
「さっさと通り過ぎたいな。少し急ぎながら行くぞ」
「分かった」
シン達は一列になりながらとりあえず遠くの方へと目指す。
「今までみたいにこのどこかに落とし穴があって、そこが出口とか言わないよな…」
「可能性は無くはないけどな」
「う…聞かなかったことにしよう」
「注意して見ておかないとね」
「クア」
それから休憩を挟みながら先へと進むシン達。
「ここは魔物がいないな」
「そうね」
「ラッキーだな」
「そんなこと言うと魔物が出てくるのよね…」
「そうだな」
と、その時、地面が揺れ始める。
「ハハ。噂をすればだな」
「笑ってる場合か?!」
「何か地面で動いてる…みんな気を付けろ」
と、地面から勢いよく何かが飛び出してきた。
「なんかでたぞ!」
「魔物か」
シン達の前には茶色の毛に覆われた目のない巨大なモグラの魔物が現れた。
「よっ」
シンがサニアで攻撃する。
が、魔物は自分が掘った穴に身を隠してそれを避ける。
「地面を掘る魔物か…なら出口は落とし穴じゃ無さそうだ」
「なんでそう思うんだ?」
「んな話後にしろよ!」
「とりあえず走るぞ!」
ということで、モグラの魔物に追われながら花畑を走っていたのだが、
「アイツがここにずっと居るならここら辺の地面は空洞だらけだ思うんだが、その割には地面がずっしりしてんだよな…」
「それがどうしたんだよ!」
「いや、だからどっかで落とし穴みたいに落ちる部分があると思!? だあ〜〜?!」
一番前を走るゴウキの地面が陥没する。
「大丈夫か!」
「おお! なんとかな!」
が、追い付いた魔物は地面から飛び出すとゴウキへその長い爪で攻撃する。
「やる気か」
次の瞬間、ゴウキは魔物の攻撃を構えた刀で受け流す。
と、同時に魔物の体へ斬撃を入れる。
「おわ!?」
魔物は斬られたことなど感じさせずそのまままた地面へと潜っていく。
「流石こいつの縄張りってだけあるな」
ゴウキは刀を上段へ構える。
「だが…」
次の瞬間、飛び出てきた魔物がゴウキに爪で攻撃を仕掛ける。
しかし、
「俺はゴウキ様だぜ」
ゴウキの姿が一瞬にして移動し、魔物とすれ違う。
すると、魔物の体は斬られ、ドスンという音と共に地面へ転がった。
「決まったぜ」
「何が決まったぜよ! 大丈夫なの!?」
「大丈夫に決まってるだろ。ナハハハハ!」
ゴウキの高笑いが辺りに響いた。
それから再び花畑を歩くシン達。
「危獣に罠に魔物とてんこ盛りだな」
「楽しそうだな」
「まあな。ダンジョンといえばこれだろ」
「お前のその元気をみんなに分けて欲しいところだ」
「フフン」
満足気なゴウキ。
「多分、あんまり褒められてないよ?」
と、そんなゴウキにレイオーネが言う。
「あれ?」
そんな時、
「クア!」
サレサが何かを知らせようと声を出す。
「ん?」
「どうした?」
「何かあったの?」
「クア」
と、その時、
「この揺れは…」
「この広さでアイツだけなんておかしいと思ったが…」
地面が揺れると二体のモグラの魔物が飛び出してきた。
「っ……これは」
「同じやつか」
「出やがったな」
「どうする?」
「どうする? そうだな。折角だし戦うか。追われながらこの花畑走ったら俺みたいになるかもしれねえからな」
「それは嫌ね」
「クア」
「では戦うか。二手に分かれよう」
「分かった。行くぞ」
それからシン、エルフィン、レン、サレサ。
ゴウキ、レイオーネ、グラートに分かれて魔物と戦った。
一度戦っている相手ということもあって難なく討伐はできた。
「今回は俺が倒してやったぜ」
「フン。譲ってやったからな」
「何?!」
「そんなことで揉めるな」
「全くこの二人は…」
「面白いね」
グラートとゴウキの会話を見ていたレイオーネが言う。
「面白い? あの二人が?」
「うん。今までこんなこと無かったから」
「そっか…確かにこんなどうでもいいことで口喧嘩なんてしなさそうだもんね」
「う〜ん…しないこともなかったけど、でも雰囲気は全然違った。こんなに柔らかい感じじゃなかった」
「こういうのは苦手か?」
「ううん。こっちの方がいい」
「そうか」
(レイオーネも少しずつ俺達に慣れてきたのかもしれないな)
と、話をしながら歩いていると前方にやっと出口を見つける。
「やっと着いたか」
「これでもう終わりなことを願う」
「先へ進もう」
花畑を後にしたシン達は木でできたトンネルを進む。
すると、
「この光って」
「フロリアの居るところかもな」
前方から明るい光が見えてきた。
「やっと来たか」
「久しぶりだ」
「終わっちまったか」
それからシン達は光の射す方へと近付く。
すると、そこには今までと同様の木でできた宝箱があった。
「フロリア!」
シンが名前を呼ぶ。
すると、部屋の光とは別の光が現れる。
「お久しぶりですね」
「ああ」
「また人が変わりましたね」
「ああ。色々あってな。今はこのメンバーでここを攻略してたんだ」
「そうですか…色々と聞きたいことがありそうな顔ですね」
「当たり前だ」
「分かりました。であれば先に神器をお渡しします。話はその後に」
「神器か…」
「今回は誰にしますか?」
「はいはい! 俺! 俺欲しい!」
「おいおい、神器といえば俺だろ?」
「お前たちは…」
「どうしようか…」
「ああ…」
(思えばサレサの神器はまだ貰ってないことになってるし、ゴウキの神器もあの黄金の鎧から剣になってるんだよな…)
「サレサ、神器使ってみるか?」
シンが聞く。
すると、
「よっと。ううん、私はいい。それよりレイオーネは? 戦いの時大変そうだったよ」
「私? 私は監視対象だから神器は持てないよ」
「でも…」
「いや、神器を受けること自体は問題ない筈だ。俺が預かっておく。それでもいいなら問題はない」
「だって。みんなはどう思う?」
「どうしてもって言うなら俺はそれでもいいぜ。神器ならこいつがあるからな」
「俺も大丈夫だ」
「私も」
「ま、今回は譲ってやるか」
「ありがとう。なら、神器はレイオーネが受け取って」
「……分かった」
「では、神器はレイオーネが受け取るということですね」
「うん」
「それではこちらを受け取ってください」
レイオーネは言われた通り宝箱を開ける。
すると、中には短剣と銃が一体になったリボルバー式の銃剣が一丁あった。
「この神器の名前はファントムバレットと言います」
「ファントムバレット…」
レイオーネはファントムバレットを手に取る。
持ち手は木製で銃本体は金属製だ。
「……えっと」
試しにシリンダーを見たレイオーネが言葉に詰まる。
「弾は?」
「無いです」
「……弾ないの?」
「はい。無いです」
「分かった。とりあえず、今はエルフィンが持ってて」
「あ、ああ」
エルフィンはレイオーネから銃剣を受け取る。
「さ、それでは話を始めましょうか。まずは今世界で起こっている異変について」
「異変…てことはやっぱり」
「はい。あなた方が七つの罪人を半壊させたことによって世界はいい方向へ大きく変わった。その筈でした」
「でも違ったってことだろ?」
「ええ。ご存知の通り、今世界には五匹の危獣がいます。一匹はあなた方が先程捕らえたシャレイペル・スネークですね」
「危獣ってやっぱり五匹だったんだな」
「ノインさんの予想は合ってたってことね」
「危獣はかつて世界を崩壊に追いやった強力な能力を持つ獣です。それが今、また暴れ始めたのです」
「その危獣のことについて聞きたい」
「ええ。危獣はシャレイペル・スネークを除いて後四匹。一匹は黒狼、ゼルク。消えない黒炎を操る狼の獣」
「一匹は氷兎、ツンドラ。止まない吹雪と共に土地を凍らせる大兎」
「一匹は震象、ベヒモス。地震で大地を揺らす巨象」
「最後は石眼龍、クロノリス。見たもの全てを石化させる最悪の龍。これが危獣の全てです」
「黒狼ゼルク、氷兎ツンドラ、震象ベヒモス、石眼龍クロノリス。こいつらが暴れてるってわけか」
「なんかどんな感じの危獣なのかなんとなくしか分かんないな」
「いや、なんとなく分かるだけでも十分過ぎるぐらいだ」
「シン。あなたには今言った危獣を倒してもらいます。でなければいずれ世界は壊されてしまう」
「……最初は兄さんを探す旅だった筈なんだけどな。それが今じゃ世界を救うか…人生何があるか分からないな」
「人生なんてそんなもんだよ」
「…分かった。俺はこの世界にいるみんなの為に、戦う」
「ありがとうございます。この役目があなたでよかった」
「頑張らないとね?」
「ああ」
(ここから危獣を倒すわけか。一筋縄じゃあいかないだろうな。でも、俺はやる。この世界を救う為に)
「で、危獣はどこにいるんだ?」
「そうですね。今までは過度な助言はしませんでしたが、そうも言っていられない状況です。私もこの世界の為に何かしてあげたい」
「フロリア…」
「一度リネオスへ戻ってください。コナンが目を覚ましましたから」
「コナンさんが?」
「あの爺さんもしぶといな」
「こら!」
「良かったぜ」
「その後、各地の危獣の情報が手に入るとは思いますが私からも情報をお伝えしますね」
「黒狼ゼルクはリネオスから西の方角にあるフィオラントという街の近くに。氷兎ツンドラはトレミアムの近くに」
「震象ベヒモスはアルヴェリスの近くに」
「アルヴェリス…!?」
「アルヴェリスってレイオーネの……」
レイオーネは複雑そうな表情を見せる。
「そして、石眼龍クロノリスはグレイシアの東側にいます」
「なるほどな。で、俺達はどうすればいい? 何からすべきなんだ?」
ゴウキが聞く。
「リネオスに戻った後、フィオラントに向かってください」
「フィオラント…ってことは黒狼ゼルクから倒せってことか」
「はい。あなた方なら問題ない筈です」
「その後はどうすればいい」
今度はエルフィンが聞く。
「その後は南下してトレミアムへ。その後は東に向かいアルヴェリス。そして、最後にグレイシアへ向かってください」
「随分と具体的だな。今までの曖昧な感じはなんだったんだ?」
「もう曖昧では済まされない程に世界は不安定になっているのです。それを修正する為には仕方ありません」
「……分かった」
「じゃあ、これからとりあえずリネオスに戻らないとね」
「ああ」
「…レイオーネ、大丈夫?」
サレサがレイオーネに声を掛ける。
「ああ…うん」
「……」
「それとトレミアムへ向かったらアセフと会ったあのダンジョンに寄ってください」
「ん? どうしてだ?」
「それが必要になる筈です」
「……分かったよ」
「みんなで来てくださいね」
「ああ」
「では、私から伝えられるのはこのぐらいですかね。この世界の運命はあなた方に委ねられています。どうか世界を救ってください」
「世界救うなんて実感湧かねぇが、でも、頼まれたからには頑張らないとな」
「グラートのくせにたまにはいいこと言うじゃない」
「フン」
「では頼みましたよ」
そういうとフロリアは光と共に消えた。
(狂人については何も言われなかったな。今のところは関係ないのか?)
「それでは一度リネオスに戻ろう。そこからフィオラントだ」
「そうですね」
「危獣との戦いが俺を待ってるぜ」
「燃えてきたぜ!」
「……」
「レイオーネ…」
(聞きそびれたこともあるし、これからどうなるのか不安だが…やるしかない。頑張ろう)
それからシン達は部屋にあった木の螺旋階段を使ってダンジョンから脱出した。
風邪で体調悪くて一日遅れました。
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