195話 扉から扉へ
「なあ…これどう考えても罠じゃないか?」
「俺もそう思う」
「俺もだ」
場違いな扉の前まで近付いたシン達は扉の前で立ち往生していた。
「怪しいね」
「そうね…」
「クア…」
「だけど開けて中を見ないとだろ?」
「俺開けたくねぇからお前が開けてくれよ」
「全く…仕方ねえ奴らだな…じゃあ、開けるぞ」
「気を付けろよ」
「ふん。俺を誰だと思ってやがる。世界最強ゴウキ様だぞ」
そう言ってゴウキは勢いよく扉を開けた。
すると、
「がぼおがあぼが!?」
まるで溜まっていた池の水を一気に抜いた時のように勢いよく水が流れてきたのだ。
「もう! なんなのよ! びしょびしょじゃない!」
「ふうー死んだかと思ったぜ! ハハハッ!」
「笑ってる場合かよ!」
「だが、毒じゃなくて良かった。命拾いしたな。水以外なら死んでたかもしれない」
(随分と殺意が高いダンジョンだな…)
「サレサ大丈夫?」
「クア…」
サレサは身震いして体の水を弾き飛ばす。
「中はと…」
ゴウキは立ち上がるとすぐに開いた扉の中を覗く。
「おお?!」
「どうした? 何かあったのか?」
エルフィンが扉に近付く。
「……これは」
「流石ダンジョンって感じだな」
ゴウキとエルフィンの反応を見たシン達は立ち上がり扉の中を見る。
と、そこは上下左右が出鱈目な空間だった。
階段があり、その先に扉がある不思議な空間。
開けた扉からも階段の先に一つの扉がある。
「なんだこれ…?」
「上下も左右もバラバラだな」
(前にもこんな感じのダンジョンあったな)
「たまにあるんだよこういうあべこべなダンジョンがな」
「前にもこんな感じのダンジョンあったよね?」
「ああ」
「落ちたりしないんだな」
「罠とかじゃなければいいさ。行こう」
それからシン達は扉の中へ入り階段を上っていく。
「これってこの階段から外に落ちたら何処に落ちるんだろうな?」
「どうだろうね」
「何か物を落としてみたら分かるかもよ」
「落とす物か…水とか落としてみるか」
「止めとけ。その水が回り回って自分に牙を剥くかもしれないだろ?」
「まあ、それもそうだな」
「よし、着いたぞ」
階段を上り終えるとまた扉の前へと辿り着く。
「今度は何が出てくるかな」
「一応警戒しておこう」
エルフィンは刀に手を掛る。
「そうは言ってもこんな階段しかない狭い場所でどうしろって言うんだ?」
「準備をしておいて損はない」
「じゃあ開けるぞ」
「ああ」
ガチャっという音と共に扉が開く。
すると、そこは何処かの扉へと続いていたようで今度は下る階段が見えた。
「扉の先はまた階段…てことは扉から扉に移動していくんだろうな」
「マグマとかが溢れ出なくて良かったね」
「なんてこと言うんだ?!」
レイオーネに思わず突っ込みを入れるグラート。
「私なりの冗談だよ」
「怖すぎだろ」
「まあまあ、レイオーネなりに場を和ませようとしてくれたんだからさ」
「……」
それからシン達は幾つもの扉を開けていった。
どこに向かっているのか、いつまで扉を開け続けばいいのか分からないままそれなりの時間が経過した。
「罠も無くて、魔物もいないなんて少し不気味だな」
「そうだね。そもそも生き物がいないよね、ここ」
「言われてみればそうだな。周りを見渡しても俺達以外誰も居ないしな」
「おっ、お前らも物足りなさを感じてきたか?」
「そんなわけないでしょ?」
「ゴウキは物足りないの?」
「当たり前だ! ドラゴンとか、見たことない魔物とか戦ってみたいだろ?」
「……分かんない」
「みんな共感してくれないんだよな」
「平和が一番だろ」
「そりゃあな。でもたまの気分転換が欲しいだろ?」
「いつまでそんなこと言ってるんだ。早く先に進むぞ」
「へいへい〜」
と、ゴウキが扉に近付こうとしたその時、ガチャっと前の扉が開いた。
「ッ!?」
ゴウキは一気に戦闘態勢に入る。
「なんだ…」
扉から出てきたのは体が黒い霧のようなもので覆われている人型の何か。
「みんな、一旦距離をとるぞ」
「分かった」
得体の知れない敵に距離をとる。
が、この敵は特に走ることもなく、ただただゆっくりとシン達へと近付くだけだった。
「アレに触れられたらヤバそうだな」
「不気味すぎだろ」
「一度戻るか」
「うん」
「でも今まで一本道だったろ? このまま戻ってもこいつがいるんじゃいつまで経っても前に進めないぞ」
「じゃあ、お前が戦ってみるか?」
「よ〜し戻るぞ〜!」
「たく、調子の良い奴だ」
それからは元来た扉まで戻ったシン達は扉を開ける。
が、
「この扉の先ってこんなだったか?」
扉を開けるとそこは今まで通って来た道ではなく、知らない階段が続いていた。
「なるほど。一度閉じたら別の場所に繋がるみたいだな」
「とにかく今は先に行こう」
「そうだな」
シン達は扉の向こうへ行き扉を閉める。
「シン、もう一度扉開けてみろ」
「ああ」
言われた通り扉を開けてみる。
すると、また知らない場所に繋がっていた。
「やっぱりか」
「ならわざわざ歩かなくて良かったね」
「そっか。扉を開け閉めするだけでいいんだもんね」
「うん」
「なんだよ、ならさっさとバタバタしてここから出ようぜ」
「そうしたいんだがな。一応気を付けろよ。さっきのやつが開けた瞬間、目の前にいるって可能性もあるからな」
「確かに入口で待ち伏せされたらそうなるか。でも、やらないといつまで経ってもここから出られないぞ?」
「…だな。しょうがねぇ。俺がやるからお前らは少し離れてろ」
シン達は扉から少し離れる。
すると、ゴウキが次々と扉を開けていく。
「なあ、これってどうやってここが出口だって分かるんだ?」
「さあね。でも、階段じゃない所に出たらそこが出口なんじゃないかな」
「階段じゃない所か」
「時間が掛かりそうだな」
それからしばらくの間、ゴウキはバタバタと扉を開けていた。
そして、
「おっと…閉めるところだったぜ」
ゴウキは開け閉めを止めた。
「何処かに繋がったらしいな」
「さっきのアイツが出てこなくて良かったな」
「ああ」
「それじゃあこの先に進んでいいんだよね?」
「安全って保証は無いけどね」
「そんなこと言うなよ。気を付けて行こう。ここから先はまた罠とか魔物がいるかもしれないからな」
「そうだな」
「んじゃあ行くか!」
それからシン達は扉を通り何処かへと続いている道の先へと進んだ。
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