194話 森と罠
シャレイペルとの戦闘を終え、先へと進んだシン達は開けた場所まで来ていた。
「今度はまた随分と開放感のある場所に来たな」
シン達の前には草原が広がっていた。
頭上には太陽が上り、そよ風が頬をくすぐる。
「ダンジョンは本当に不思議な場所だ」
「ここって地下なのになんで太陽があるんだろうな?」
「ダンジョンに理由なんてないと思うけどな…あっちに木が生い茂ってる場所があるから行ってみよう」
「うん」
それからみんなで草原を移動すると大小様々な木々が生い茂る場所まで来た。
「ここにシャレイペル・スネークが現れたらやばかったな」
「ああ。ここでアレを殺すのは無理だろうな」
「助かったぜ」
「なんかここ暑いな」
「そうだね。あの草原のところは涼しかったのにね」
「そういう場所なのかも。あまり長居するのはやめた方がいいかも」
「そうだな」
「んじゃ行くか。俺が先頭を行くからみんなは俺に付いてこい」
「またゴウキが先頭かよ…」
「文句言わないの」
「へ〜い」
それからゴウキを先頭に木々の間を縫うように進む。
「はあ…暑くねぇか?」
「そうだね…喉が乾いちゃう…」
汗をかきながら進むシン達。
「出口が早く見つかるといいんだがな…ここは上から下に降りて来たから、もしかしたら何処かに下に落ちる穴があるかもしない。みんな注意深く周りを見てくれよ」
「おう」
「分かった」
(この森の中から穴を探すのは骨が折れるな…にしても随分暑いな…太陽は照ってるけど草原のところは涼しかった筈だが)
と、その時、
「止まれ」
ゴウキがみんなを止める。
「どうした?」
「ああ。この先に何かいる」
「魔物か?」
「多分な。だが、それが動かなくなった。怪しまれてるかもしれねえ」
「魔物なんて殺っちまえばいいだろ?」
「んなことは分かってる! そうじゃなくてだな、ここで魔物には会ってないだろ?」
「あん」
「つまりシャレイペルのことは一旦除いて、強い魔物が他の魔物を殺してるからいないって可能性がある」
「強い魔物が居るかもしれないのね?」
「そういうことだ。分かったかガキンチョ」
「誰がガキだ!」
「サレサはどう思う? 何か分かりそう?」
レイオーネが聞くがサレサは首を横に振る。
「ゆっくり慎重に行こう」
それからシン達は周囲に注意しながら魔物がいたとされる場所まで移動する。
「見えたか?」
「ちょっと待て」
草木に隠れながら音のした場所を見渡す。
すると、湖のほとりに猪の魔物が倒れているが見えた。
「何やってんだ…」
「寝ている…訳ではないんだよな?」
「魔物が寝ているところを見たことあるやつがいると思うか? その前に離れるか殺したりしてるだろ?」
「じゃあ、アレは死んでるってことか?」
「血は見えないけどな」
(どういう状況だ? どうしてあの魔物は動かないんだ?)
「俺が様子を見てくるからお前らはここで待ってろ」
「一人で行くのか?」
「心配すんなよ。確認してくるだけだ。もし戦闘になったら援護頼むぜ」
「分かった」
「じゃあ任せたぞ」
「おう」
ということでゴウキはひょっとこのお面付けながら慎重に魔物の背後へ近付く。
「なんかかくれんぼしてるみたいだな」
「こんな時に何言ってるのよ」
「静かにしないとダメな時ってさ、大声出したくなるんだよな…」
「絶対止めろよ?」
(こんな時になんで要らない心配をしないといけないんだよ…)
と、その時、
「クチュンッ…」
女の子らしい可愛いくしゃみが響く。
「エエッ?!」
ゴウキが思わず振り返る。
「ごめん。鼻がムズムズしちゃって」
レイオーネが謝る。
「そうか…」
(ゴウキは大丈夫か?)
シンはゴウキへ視線を向ける。
が、特に変わった様子はない。
どうやら魔物には気が付かれてないみたいだ。
「……? みんな、もういいぞ」
と、魔物まで辿り着いたゴウキがシン達を呼ぶ。
「なんだ、いいのか?」
「ああ…」
近付いたシン達が魔物を見る。
と、魔物は既に息絶えていた。
「これは…」
「理由は分からねぇがもう死んでる。外傷もないところを見ると毒か何かだとは思うが…」
「ならこの湖の水が毒なんじゃない?」
レイオーネが言う。
「てことはこの湖全部毒ってことか?!」
「そう…いうことだよな」
「……だけどよ、ここの魔物ならそれぐらい分かってると思うんだよな…」
「つまりこの魔物が死んだ原因は他にあるということか?」
「ああ」
「その原因って?」
「そこまでは分からないが、気を付けていく必要が…」
と、ゴウキがその場から立ち上がり歩き出そうとした瞬間、ガコンという音が鳴る。
「注意しろ!」
その言葉に全員が警戒する。
すると、どこからかゴウキ目掛けて矢が飛んできた。
「あぶね!」
すんでのところ腰に挿していた刀でそれを防ぐ。
「なるほど…これがここのダンジョンってことか」
「何がなるほどなんだよ!」
「ここのダンジョン、それかここの階層は罠のダンジョンってことだ」
「罠か…」
(今までも罠があるダンジョンはいくつかあったからな)
「この矢を見て見ろ。毒が塗ってある」
「毒?! おっかねぇな…」
「かなり危険なダンジョンなのは間違いないみたいだ」
「であれば気を付けて進んでいくしかないな」
「毒…」
「今みたいな罠が他にもあるならあんまり歩き回りたくないね」
「ああ」
「でも行くしかねだろ? ずっとこのままって訳にも…」
「そうだな。ここからは一瞬の判断ミスが生死に関わる。みんなできるだけ俺の後ろを付いて来てくれ。踏む足の場所もできるだけ同じ場所で頼む」
シン達は一瞬の間の後にコクリと首を縦に振った。
「行くぞ…」
それからシン達は慎重に森の中を探索した。
が、何度かは罠に嵌ってしまい、命拾いをした。
剣山のある落とし穴ではグラートが落ちかけ、どこからか飛んでくる丸太の雨もグラートが殆ど狙われ、倒れている別の魔物に近付いた時は上空から魔物に狙われたりと色々あった。
基本的にはグラートが原因で罠が発動している為、グラート本人が狙われていた訳だが。
「なんか…悪いな…」
「気にするな。誰もお前を責めてないだろ」
「んや、それはそうなんだけどよ…ほら、基本俺が原因でみんなが危険な目に遭ってるわけだろ?」
「グラートは昔から冴えてる時と鈍臭い時の差が凄いからね」
「……」
「グラートはやっぱり抜けてるんだね」
「クア」
「俺とは全然違うぜ」
「アハハ…」
(みんな結構辛辣だな…)
と、その時、
「みんな、多分出口だ」
ゴウキの視線の先には大きめの木の根元に場違いな木製のドアがあった。
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