191話 十個目のダンジョン
シン達が中に入ると周りは世界樹の根なのか全て樹の何かでできていた。
「エルフィン、お前ダンジョン久しぶりだろ? どうだ? 緊急とかするのか?」
「まあ、少しな。だが、それは悪いことでは無い。適度な緊張は自分を冷静にさせてくれる」
「それは間違いないが…お前でも緊張するんだな」
「それはそうだろう。俺だって人間だ。緊張するし、不安にもなるさ」
「みんな同じか…」
先頭を行く二人の会話。
その後ろをシン達は付いて行く。
「あの二人って仲良いよね」
「ああ、そうだな」
(前の世界ではエルフィンとダンジョンを攻略するなんてなかったからな。不思議な感じだ)
「お前、かなりの数ダンジョンを攻略してきたんだろ? ここのダンジョンはどんな場所なのか知らないのか?」
「ここか? ダンジョンの情報は高いからな…それに俺は何も知らないで行くのが楽しみでもあるから悪いが知らないな」
「そうか…」
「でも、大丈夫だ。危険なダンジョンとかは情報が入ってくるからな。そう考えるとこのダンジョンは危険って感じでもないとは思うぜ」
「だといいがな」
「心配すんなよ。俺に任せておけ!」
「あんまり張り切って空回りするなよ? 俺はこういう室内はあまり得意じゃない」
「狭いから刀だと邪魔か?」
「流石に分かるか。そうだ。だからあまりこういう室内で狭い場所は好まない」
「そりゃご愁傷さまだ。ダンジョンは自分に合わせてくれない。諦めろ。自分の最大限のことをやるべし。これがダンジョン攻略の基本だ」
「ご忠告感謝する」
「さあ、そろそろ広い場所に出そうだぞ。音が変わった」
「音?」
それから少しすると開けた場所へと出たシン達。
「綺麗な場所ね〜」
そこには何処からか流れ込んできたキラキラと輝く水が川のように何処かへと流れていく幻想的な場所。
ここがダンジョンの中ということを忘れてしまいそうなそんな光景だ。
「ああ。リネオスの地下の水に似ているかもな」
「うん、そうかもね」
「こういうありえない光景を見るとどうやって、何故という言葉が浮かぶ」
「まあな。色々と神様にも事情があるんだとよ」
「神様も忙しんだね」
「らしいぜ。何処ぞの疫病神の所為でな」
「裏切り者の神のこと?」
「ああ。そりゃそうだろ? 憶測だが、その裏切り者の神が居なかったらこの世界にダンジョンも神器も無かったと思うぜ」
「ふ〜ん」
(そう考えるとエドワードの研究していた魔具って一体なんなんだろう。フロリアに会う次いでに聞いてみるか。時間があるといいが)
「さ、話はその辺にして。この後はどうする?」
「まずは出口を探す。何個かあったらその時に考える」
「そうか。しかし、そうなるとここは少し広いな」
いくつか生えている木々の間を小川が流れているような場所なので全貌が見えない。
が、狭くないことはずっと奥まで続く木々を見て容易に想像できる。
「確かに広いが…こういう時に役立つ秘密兵器が俺達には居るだろ?」
「秘密兵器?」
「ん」
ゴウキが顎でその秘密兵器を指す。
「クア!」
そこにはゴウキに秘密兵器と言われて不服そうなサレサがいた。
「野生の勘に頼るのは大事なことだ」
「それはそうかもしれないが…怒ってるみたいだぞ?」
「クア!」
「気にする事はない。サレサ行け! 今度はお前が先頭だ!」
「クア!!」
それから少しの間、ゴウキはサレサに追いかけられていた。
小川が流れるこの場所を探索して小一時間が経ち、この場所の全貌が見えてきた。
「ここの出口は俺達が来たのを除けば二つ。どっちにする?」
シンがみんなへ聞く。
「どっちって言ったって先が見えないからな。おい、サレサ。魔物の勘に任せる。どっちがいい?」
ゴウキが聞くとサレサは魔物の姿で悩む動作をした後、首を振って片方の出口の方を指した。
「あっちか。じゃあ、行くか」
「ああ」
「じゃあ、行こっか」
「クア」
それからシン達はサレサが選んだ方の出口へと移動を始める。
「ここは全部木でできてるみてぇだな」
「そうね」
「ダンジョンはそう言うのも珍しく無いと聞いたが?」
「それはそうなんだが、ここは世界樹の下にあるダンジョンだろ? でもだからってこのダンジョンまで木でできてるってのは何故なんだと思ってな」
「たまたまじゃないのか?」
「世界樹もダンジョンとか?」
「いや、世界樹は幹の外周を削って上まで行ける螺旋階段にしてるんだ。だから世界樹はダンジョンじゃない。まっ、たまたまなんだろうけどな…こんなにダンジョンがあるんならそう言う偶然もあるだろう」
「クア!」
と、シン達が話しているとサレサがさっさと行くぞとでも言いたげに出口の前に居る。
「そうだな。今は行くか」
ということでそれからもダンジョンの奥へと進んでいくシン達。
少し下り気味の道を進むとまた変わった場所へと出た。
「今度はなんだ?」
シン達の目の前には緩やかな弧を描く一本道がずっと続いていた。
「魔物もいない。罠も無さそう。ただただずっと道が続いてるだけ…なのか?」
「油断は禁物だ」
「とりあえず進むか?」
「まあ、どっちにしろ行かなきゃダメだからな」
「なんでいきなりそんな慎重になってるのよ?」
「いや…なんでかと聞かれても…」
ゴウキの煮え切らない反応。
(そういう似たような光景がずっと繰り返すダンジョン、リネオスにもあったな…)
「なあ…」
と、シンがみんなへ前に体験したダンジョンの話をしようとした時、
「みんな! 急いで走って!」
いつの間にか魔物から人の姿に戻っていたサレサが言う。
その様子は必死で、適当なことを言っているようには見えない。
「早く!」
「お、おう…い、行くぞー?」
ゴウキが走り出すと釣られるようにみんなも走り出す。
「サレサ、いきなりどうしたの?」
「私も詳しいことは分からないんだけど、とにかくなんかヤバいのが近付いてきてるの!」
「近付いてきてる? そんな音は消えないけどな…」
「いいから早く走って!」
「ここは言われた通りにしよう。魔物の勘を信じたのは俺達だからな」
「サレサ、大丈夫?」
「うん…何かは分からないけど怖い……」
(サレサのやつ、真っ青じゃないか…サレサがここまで言う魔物なんて一体どんなやつなんだ?)
それからしばらくの間走り続けたシン達だったが、サレサの言う何かは一向に現れる気配はない。
「なあ、いつまで走ればいいんだ?」
「とにかくずっと!」
「マジかよ…おい、誰か何か来てるか見てきてくれ」
「お前が行ったらどうだ?」
「そんなのダメだよ!」
「……とにかく進むしかないらしい」
「この道、さっきから同じ景色だけど進んでるの?」
「大丈夫…な筈だよ」
「私はサレサを信じる」
「レイオーネ…」
「いや、別に信じてない訳じゃないからな?」
「おい、あれ!」
シン達の目の前には行き止まりの部分に穴があった。
「下へと続く穴か…怪しいが引き返せないならアレに落ちるしかないぞ」
と、穴に近付いたゴウキは穴を覗き込んでみる。
「かなり深そうだが滑りながら下まで行けそうだ」
「どうする? 行くか? 罠の可能性も…」
「もう行くしかないよ!」
「サレサがそう言うなら私も行く」
「シン、どうする?」
「……」
(何か来ているなら戻ることはできない。少し危険だが下に降りるしかないだろうな)
「降りよう」
「決まりだな。よし、それじゃあ、サレサ。先に行っていいぞ」
「え〜?!」
サレサが驚愕の声を漏らす。
「ひでぇな」
「最低だな…」
「最低ね」
「酷い」
「うわ〜」
「おい!? 俺は今からここに来るという奴と何かあったら戦う為にだな…」
「ふん! もう知らない! 行こう、レイオーネ」
「うん」
と、サレサとレイオーネは二人だけで先に穴へと落ちた。
「全く…お前という奴は……先に行くぞ」
エルフィンが穴へ落ちる。
「お先」
グラートが穴に落ちる。
「俺はお前らを思って…」
「じゃあ、俺達も行くか」
「う、うん…あのさ、この穴って落ちる訳じゃないんだよね?」
しゃがみ込んで穴を覗くレン。
「なんだ怖いのか?」
「んと…まあ…」
「そうか…じゃあ、仕方ない」
「え、えっと…」
シンはレンを後ろから抱き締める。
「穴が狭いからこうするしかないんだよ…」
「そ、そっか…」
「イチャイチャするなら他でやってくれ…」
二人の様子を見たゴウキが言う。
「イチャイチャなんて…」
「じゃあ行くぞ」
「えっ!? あ、ちょっと…!?」
シンとレンは一緒に穴へ落ちる。
「追ってきてるのは一体どんなやつなんだろうな」
ゴウキはニヤリと笑うと穴へ落ちた。
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