190話 世界樹の地下へ
「にわかには信じられませんね…」
シン達の話を聞いたノインが言う。
「裏切り者の神…そんなものが居るのでしょうか…」
「それは分からない。でも、ダンジョンの管理者が言うんだからそうなんだろう」
「なるほど。であれば尚更私の言ったことは的を得ていると思います。黒幕であるその裏切り者の神は狂人、つまり今のアークを利用して危獣を操る。その危獣の中には石化の力を持つ危獣もいるがそれは公にはなっていない」
「つまり、裏切り者の神にとっては切り札という訳です。だから、自分が不利なる石化の情報をウォーマットさんの神器から遮断した。こう考えるのが辻褄が合う」
「確かに辻褄は合うが…しかし、裏切り者の神とやらはアークを操ることによってどうすると言うのだ?」
「世界の崩壊に向かわせているのは間違いないだろうな」
「人類の敵というわけか」
「なんか話が難しいよお…」
「後で私が説明するよ」
「俺も頼む…」
「世界が崩壊すると裏切り者の神に得があるってことだよね? それってなんなんだろう…」
(得か…確かに得があるのは間違いないだろうけど、でもそんなこと考えたって分からない。だとすると…)
「会いに行って聞いた方がいいかもな、フロリアに」
「ああ」
「ダンジョンか…久しく行ってないな」
「ここから一番近いダンジョンは何処じゃ?」
「それなら…」
「それなら! いい所があるぜ!」
説明を始めようとしたノインを押し退けるようにゴウキが嬉々として言う。
「また始まったよ…」
「ゴウキはいつもこうなの?」
「そうだよ。ゴウキはダンジョンのことになると頭がそればっかりになるの」
「へえ」
「うるせえ! 好きなんだからいいだろうが!」
「それで何処にあるんだ?」
「おう。それはなここだ」
そう言うとゴウキは指で足元を指す。
「ん? それはつまり」
「そういうことだ。ここから一番近いダンジョンはこの世界樹の地下だ」
(フロリアに会うならうってつけってことか…)
「流石、ダンジョンがお好きなだけはありますね。よくご存知で」
「当たり前だろ?」
満足そうなゴウキ。
「ここの地下にはダンジョンがあります。その上にこの大きな世界樹があるという訳です」
「よくこの樹も倒れないね?」
「そうですね。この世界樹の根はかなり広範囲まで根が広がっていると言われています。なので下にダンジョンがあっても大丈夫なのでしょう」
「な? ダンジョンって面白ぇだろ?」
「なんであなたが得意げなのよ」
「まあ、とにかくこれから行くべき場所が決まったんだ。俺達はダンジョンへ向い、フロリアから情報を得る。それでいいな?」
「ああ」
「うん」
「ダンジョン! ダンジョン!」
「ダンジョンに行くだけでこんなにテンションが上がる人いるんだ…」
「変だよね〜」
と、ウキウキのゴウキの様子を見ていたレイオーネとサレサが言うと、
「ワシはここに残って危獣について調べておくとしよう」
ウォーマットは少し笑いながら言った。
「では、私も手伝いますよ。ここは広いですからね」
「すまんな、助かる」
「それじゃあ、決まりだな。下まではシエスタに送ってもらおう。その方がずっと早いだろ」
「そうだな」
(ダンジョンか…行くつもりは無かったが、でも危獣についての情報は知っておくべきだろう。それに、レンを助けられたことによって次はどうすればいいのか聞けるしな)
「おし! じゃ、行くぞ!」
「相変わらずだな」
やる気満々のゴウキを見たエルフィンは呆れ気味にそう言った。
「お速いお戻りですね」
「ああ…ごめんな、なんかこんな足みたいな頼み事で」
「いえ、私はそれが役割ですから」
一度ルネイリアに戻って下まで送ってもらうことになったシン達はとんぼ帰りしていた。
「さあ、行くぞ! ダンジョンが俺を待ってるぜ!」
ひょっとこの仮面を付けたゴウキが言う。
「あの間抜けなお面は何?」
「なんか、毒とかにならないみたいだよ」
「へえ…」
ゴウキを引き気味に見るレイオーネ。
「ウォーマット殿は上に残り、調べ物をするみたいなので何かあったら頼みます」
「かしこまりました」
シエスタがエルフィンへお辞儀する。
「それじゃあ、さっきからうるさい人も居るし、行きましょうか…」
「そうだな」
それからすぐに世界樹の根元まで送ってもらったシン達。
「歩きで行ったら何日掛かるんだって高さだが、ルネイリアならこの通り! 一瞬だ!」
「何故お前が自慢げに俺へ言う?」
「ほぼ俺の為にあるようなもんだろうが」
「いや、違うと思うぞ…?」
ゴウキとエルフィンの会話を右から左に聞き流しながら周りを見るシン。
周りには世界樹の大きな幹なのか根なのかもよく分からない、とにかく大きな樹がある。
その樹には外周を螺旋状に上へと続く階段があり、その階段の始まりの部分には大きな洞穴のような窪みがあった。
「これがダンジョンの入口か?」
シンがそう言うとその窪みの方へと歩いていく。
「ほら〜行くわよ〜」
レンがゴウキとエルフィンへ声を掛けると皆で窪みへと移動した。
「中は…」
シンが見ると窪みは周りが樹になっており、特別ダンジョンという感じはない。
強いて言うなら大きさが異常ということぐらいだろう。
「デカイな」
「ああ。ワクワクするぜ」
「ダンジョンはサレサの時振り」
「そういえばレイオーネって、どのぐらいダンジョンを攻略したことあるの?」
サレサの問いにレイオーネは少し考えると、
「一度だけよ」
素っ気なくそう答えた。
「そう…なんだ…」
「入口はどこだろうね?」
「そうだな」
レンに言われてシンが窪みの中へと近付く。
すると、段々も日陰になっていき、奥の方に人が歩いて通れそうな穴があるのが見えた。
「多分これだな」
「まあまあまあ。待ちな。ここは俺が戦闘を行く…じゃなかった。先頭を行くぜ」
「それは構わないけど…先走るなよ?」
「馬鹿か? 俺がそんな子供みたいなことすると思うか?」
「「「うん」」」
「何!?」
皆が口を揃えて言う。
「全く…心外だな…とにかく先頭は俺が行く。最後尾は…サレサだな」
「分かった。じゃあ、レイオーネはその前ね? しばらく話せなくなるけど…」
「うん…」
と、サレサが魔物の姿へと変身する。
「行こうか…」
「ああ」
こうしてシン達は世界樹のダンジョンの攻略を始めた。
ここにあの危獣が居るとも知らずに。
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