188話 ユグラシアへ
「こちらをどうぞ」
リネオス上空にある空中移動要塞ルネイリア。
その管理者であるメイド服姿が良く似合うシエスタがレイオーネへブレスレットを渡す。
「これは?」
「これはここへ来る為の鍵です。原則として、ここに来るにはこのブレスレットが必要です」
「へえ…」
レイオーネは戸惑いながらブレスレットを付ける。
「また皆様に会えたこと。嬉しく思います」
そう言うと座っていたシン達へ視線を向ける。
「シエスタには心配をかけたな」
「いえ。無事で何よりです。コナン様は心配ですが仕方がありません」
「心配しなくても大丈夫だろう。そんな簡単にくたばるじいさんじゃない」
「じいさんって…口が悪いわね」
「ゴウキは昔からだがな」
「ふん」
「それでシエスタよ。ここからユグラシアまでどのぐらい掛かる?」
「はい。ここよりユグラシアまでは一週間程で到着するかと思われます」
「一週間か。分かった」
「それじゃあ、その間は自由時間だよな? 俺は神器の使い方を練習する」
「分かった」
「それじゃあ、私はレイオーネにここを案内するね」
「分かった。じゃあ私も付いていこうかな」
「うん。それじゃあ三人で回ろう!」
「ここは広いの?」
「うん!」
「では、俺はウォーマット殿に色々と聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「構わん」
(てなるとユグラシアまで暇か。とりあえず今の現状とかを纏めるとして、その後の数日をどう過ごすか考えないとな)
「シン様はどうなされますか?」
「俺は…少し自分の部屋で考え事かな。纏めたいことがあるんだ」
「そうですか。では、後でお茶をお持ちしますね」
「ああ、ありがとう」
それから各々自由な時間を過ごすことになった。
「はあ…これからどうなるんだ…」
自分の部屋でペンを持ち、紙とにらめっこするシン。
「現状は石化の謎を解読するのが第一優先事項だ」
そう言いながら紙に分かりやすく今の状況を書き連ねていく。
「ユグラシアに向かって石化について調べる。石化の場所はグレイシアから東側。分かってるのわこれぐらいだ。アーク達の仕業なのかそれとも違うのか」
「でも、アーク達だとして石化させる意味はなんだ? ん〜分からないな。アーク達じゃないと考えるのがいいかもな」
「アーク達じゃないとすると何か神器か魔具によるものか…どっちにしろそれはユグラシアで調べればいい」
「結局ユグラシアに行かないと何も分からないな。とすると、後はフロリアとアセフに会ってこれからどうすればいいのか聞きたいよな。何処かでダンジョンを攻略するか…前みたいにシエスタの体で会話ってのも無理だろうしな」
「これから世界で何か起ころうとしているのか…その前触れがこの石化の謎…だとすると、ユグラシアで石化の情報を集めつつ、フロリアかアセフにこれからの事を聞くのが効率いいけど…」
と、その時、扉がコンコンとノックされた。
「失礼します。お待たせしました。紅茶をお持ちしました」
そう言ってシエスタが部屋へ入ってきた。
「ああ、ありがとう」
「いえ、どうぞ」
机へ紅茶が置かれる。
と、シエスタはシンの書いていた紙に視線を向ける。
「現状を纏めているのですか?」
「ああ。石化の謎と七つの罪人を捕まえたことでこの世界がどうなるのか、何をするべきなのか、フロリアやアセフに聞くべきって感じだな」
「…そうですか。これから先はどうなるか分からないということですね」
「ああ」
(シエスタは俺がタイムリープしてきたと知ってるからな)
「何か分からないことがあれば私にできる限りのことはします」
「ありがとう。なら、石化について何か知ってることはないか?」
「石化ですか…申し訳ないのですが私は何も」
「そうか」
「ですが…今の状況を考えるとヒントはあるかもしれません」
「ん? どういうことだ?」
「ウォーマット様は神器で石化に関しての情報を手に入れることはできなかった。ということは、神器、ダンジョン等の可能性が高いです」
「ああ」
「ですが、他にも情報を手に入れられない要素があります」
「それは?」
「神がそれを隠している場合です」
「神ってつまり」
「はい。裏切り者の神が石化の情報を遮断しているという可能性です」
「…だとすると石化の謎は裏切り者の神にとってバレると不利益なことがあるってことだよな…どうして石化の謎を知られたくないんだ?」
「そこまでは分かりませんが、あくまで可能性の話ですので」
「そうだな……うん、ありがとう」
「いえ。このぐらいのことしか私にはできませんから」
「いや、助かったよ」
(確かに裏切り者の神が情報を遮断しているなら今の状況にも説明がつく。後は単純に神器関係だからって可能性だけど…まあ、今はユグラシアに行って石化について詳しく調べよう)
リネオスを出発してから一週間が経ち、シン達はユグラシア上空…ではなくユグラシアの街の入口にルネイリアを着けていた。
「なんだこれ?!」
シンは目の前の状況に思わず声が出る。
視界にはありえない程巨大な大樹。
そして、それを利用するように街が造られていた。
ここは雲よりも上の街、世界樹と大図書館が有名なユグラシアだ。
「凄いね…」
「凄ーい!!! ねえねえ! 雲の上だよ!」
「ひぃっ…」
「そうだね」
「ここに来たことはあるが街にいきなりは初めてだ」
「本来は下から木を登って来るのですか?」
「そうだ。ユグラシアの歴史でもこのような方法で来た者は居ないだろうな」
「だろうな。移動する神器なんて聞いたことないし」
「さて、では向かおうかの」
「じいさん、落ちんなよ?」
「ハッハッハ」
「私無理……無理だから残る……」
「ダメだよ〜行こうよ〜」
サレサに体を引っ張られるレン。
「お、お願いだから動かさないで……」
「よし。じゃあ、行くか」
そう言うとレンを持ち上げるシン。
「えっ…? ちょ、ちょっと待って!!!」
「それでは行ってらっしゃいませ」
「ああ。なんかあったら呼ぶよ!」
「はい」
それからシン達はルネイリアからユグラシアへと飛び移った。
「ふう。大丈夫か?」
「大丈夫じゃない…」
「じゃあ、しばらくこのままか?」
「ラブラブだね」
「ラブ……んんっ。お、降ります」
そう言うとレンはゆっくりとユグラシアの地面へ足をつける。
「よし、それじゃあ行くか」
「ああ」
「こっちだ。付いてこい」
それからシン達はウォーマットの案内でユグラシアの街を進んだ。
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