186話 不穏な知らせ
世界の中心と呼ばれる王都リネオス。
地理的にも経済的にも物事はリネオスを中心に動いていると言っても過言では無い。
そんな世界の中心、リネオスにある王城はそれはそれは荘厳な外見は勿論のこと、その中までも世界の中心の名に負けない装飾が凝られている。
恐らく一歩足を踏み出せばその距離だけ使われている素材の金額で一つの町の経済的な問題は吹き飛ぶだろう。
そんなリネオスの王城には今、場違いと言わざるを得ない美少女が二人歩いていた。
「今日はどこを探索しようかな〜」
そう言うのは元は魔物のサレサだ。
癖っ毛の空のような明るい髪色の髪は肩のら辺でその癖っ毛の本領を発揮しフワッとパーマを作っている。
「サレサは探索好きなの?」
そう聞くのはサレサの横を歩く銀髪の美少女。
その銀の髪は身に着けた黒のドレスによってより目を引く。
そんな彼女の名前はサーシャ・レイオーネ。
つい先日の王都を襲った七つの罪人の一人だ。
そんな罪人である彼女がどうして今王城の中を歩いているのか。
それはサレサによる影響が大きいだろう。
元々七つの罪人は殺人すら厭わない連中の集まり。
が、レイオーネは殺人をしたという事件は一度もないことが分かった。
それに加えて彼女は元々アルヴェリスという街で貴族として生まれた令嬢だったのだが、同じ街の貴族に罠に嵌められ殺人の濡れ衣を着せられたということも判明した。
これらの要因により特別にレイオーネは外に出ることを許されたのだ。
「色んなものが見れて楽しくない?」
そんなサレサとレイオーネの二人だが、どうして王城を歩いているのかといえばサレサの気まぐれだ。
ここ最近のサレサの趣味は王城探索なのだ。
「ここは何回か来てるけど広すぎてちゃんと見たこと無かったから」
「ふ〜ん」
「レイオーネは探索は好き?」
「私は……どうだろう。今はそうでも無いかも。昔は楽しかった気がするけど…」
「そうなんだ…じゃあ戻る?」
「ううん。サレサとなら楽しい」
「え?! エヘヘ…」
サレサは嬉しそうに表情を崩す。
と、その時、
「あっ、こんなところにいた」
そう言って二人に近付いてくるもう一人の美少女。
「またレイオーネを連れ回してたのね? サレサ?」
腰に手を当てながら困り眉を彼女達に見せるのは接近戦が得意な黒髪の戦姫、レンだ。
「レンお姉ちゃん…」
バツが悪そうな顔のサレサ。
「レイオーネも面倒だったら言わないとダメだよ? サレサは遊びに関して遠慮なんてしないんだから」
「別に面倒じゃない。寧ろ嬉しい」
「レイオーネ…フフン」
サレサはしてやったぜ顔をレンに見せる。
「ンンッ! まあ、レイオーネがそう言うならこれ以上は言わないけどね。と、そんなことよりゴウキが私達に集まって欲しいんだって」
「ゴウキが? どうしたんだろう?」
「何かあったのかな…」
「さあね。ゴウキは気まぐれなところがあるからね。とにかく一緒に行こう」
「分かった」
「はい」
それからレンと一緒にゴウキの元へと移動する三人。
「連れてきたわよ〜」
レンがそう言って扉を開ける。
「おお、遅かったな!」
そこにはグレイシア王国の王子、ゴウキが荷物を纏めているところだった。
「サレサ達を探すのに少しね。それよりもどうしたのその荷物」
「ああ。シンとグラートも来るからそしたら話す」
「ふーん」
と、その時、
「待たせたな」
そう言って丁度よく部屋に入ってきたのは黒髪の青年、シン。
そして、その後ろにはレンの幼馴染のグラートがいた。
「集まったか。コナンには悪いが目が覚めたらその時お前らから伝えてくれ」
「ん? それで話ってなんだ?」
グラートが聞くとゴウキはベッドへとドスンと腰を下ろす。
「実はな、俺は少し修行の旅に出ようかと思ってるんだ」
「旅に?!」
「一人で行っちゃうの?」
「ああ。アークとの戦いでまだまだ俺には力が足りないと思い知らされた。だから俺は強くなりたい!」
「いきなりだな…」
「急で悪いな」
「もう行く場所は決まってるのか?」
「一度グレイシアへ戻ろうと思ってる。俺の専用特訓場があるからな」
「てことは、俺とレンとシン、サレサとレイオーネ。情報収集専門のウォーマットと今は寝ているコナンの七人か…それだけ居ればもしもの時にも対処はできそうだな」
「でも、コナンさんはまだ…」
と、レンがそう言うとゴウキが不敵な笑みを浮かべながら、
「そこは任せておけ。俺の代わりを用意した」
「「「代わり?」」」
と、その時、
「ここに居たか。みんな至急集まってくれ」
そう言って部屋に入ってきたのはリネオスの王城エルフィンだ。
「ん? どうかしたのか?」
「ああ。悪い知らせだ」
「?」
それからエルフィンに案内されて移動したシン達は王の間まで来ていた。
「悪い知らせってなんだと思う?」
「さあな」
(前の世界線ではここまで辿り着けなかったからな…これからどうなるかなんて全く予想がつかない)
「いきなり集まってもらってすまないな」
そう言うのはこの国の国王であるリネオス・エルフォード。
「実はな、ここより北東。グレイシアの東側に位置するとある一帯にて不思議な現象が起こっているという知らせが入ってきた」
「不思議な現象…ですか?」
「何? 不思議な現象って?」
「うむ。情報元であるグレイシアからの手紙によると少し前からとある地域一帯が石化しているという現象が起きているようなのだ」
「石化?」
(前の世界線でも石化という単語を聞いたことはなかった。七つの罪人関係ではなさそうだな…でも、だとするとその一帯何が起きてるんだ?)
「石化って石になるってことだよな? そんなことって有り得るのか?」
「本来であれば有り得ない。空想上の設定として出てきたりするがな。今のところ考えているのは神器か魔具による影響だと考えている」
「石化の能力…」
「ねえ、レイオーネ。何か知らない?」
「ごめん。私は何も。でも、アークもエドワードも石化に関する能力は持ってなかった。多分、他の七つの罪人のメンバーも同じだと思う」
「だとすると新しい何者かによる可能性が高いってことか」
(石化…一体何が?)
「うむ…その可能性もある。が、行方をくらませているアーク、エドワードの仕業かも知れぬ。そこでそなた達には情報収集を頼みたいのだ」
「何があったのか調べて来いってことか…グレイシアの近くならまあ丁度いいかもな…俺はいいぜ。お前らはどうする?」
「う〜ん」
「何かの前触れかもしれないし、情報は集めておいた方がいいとは思うけど…」
「石化か…調べるって言ったってどうすんだ? アイツらの仕業かどうかも分からないんだろ?」
「レイオーネはどう思う?」
「私は…調べて置いた方がいい、と思う。一緒に居たけど何をしようとしているのかまでは分からなかったから」
「そっか」
(どうせ宛もないんだし、何が起こってるのか調べるか)
「分かりました。行こう」
「すまんな。礼と言ってはなんだがエルフィンを同行させるつもりだ」
「エルフィンを?」
「コナン殿がまだ寝ている状態だからな。代わりというわけだ」
「なるほど」
あの戦いからずっと寝込んでいるコナンのことは心配だが、命に別状はないみたいだし離れることにはなるけど大丈夫だろう。
「戦いが終わったばかりでまた頼むのは気が引けるが頼んだぞ」
「分かりました」
それからシン達は王の間を後にした。
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