184話 戦い、再び
時は少し遡り、王城内にて。
「何やら騒がしくなってきたの」
ウォーマットは図書室にて椅子に座りながらこれからのことに役立ちそうな情報を探していると、外が騒がしくなってきたことに気が付く。
と、その時、部屋の扉が勢いよく開いたかと思うと、
「! ウォーマット殿! 早くお逃げ下さい!」
「何事だ?」
部屋に入ってきた兵士の慌てた様子に情報を確認する。
「地下にある犯罪者達が牢から脱走したようで今はそれによってパニック状態です」
「……奴らの仕業か…分かった。戦えない老いぼれは逃げるとしよう。だが、ここにいるもの達はどうする?」
「幸い、国王様とエルフィン様はここにいないので大丈夫かと。サリア様は我々が責任をもって安全な場所へ」
「うむ」
「さあ、早くウォーマット様もお逃げ下さい。私に付いて来てください」
「分かった」
それから部屋を出て兵士の後を付いて行くウォーマット。
「それで、これからどこに向かうのだ?」
「王族用の隠し通路があります。本来であれば客人でも使うことは出来ないのですが、我々に手伝って頂いてる方々を無下には出来ないと、王妃様からの指示がありまして」
「そうか。それは有り難い限りだ」
と、その時、バーンという大きな音ともに城が大きく揺れる。
「何だ?!」
「分かりません。ですが、よくない出来事なのは間違い無いでしょう」
「……そうだな」
すると、下の階から上がってきた兵士がウォーマットに気が付き、
「今、下で脱獄者達が爆薬を使って城の壁を破壊したみたいだ。早くここから逃げるように」
「分かりました。急ぎましょう」
「うむ」
それから急いで先を進むウォーマット。
先ほどよりも騒がしくなってきたのを感じながらただただ城の中を走る。
と、その時、
「脱獄者達が来たぞ!」
「「?!」」
その声がした方へ視線を向ける。
すると、そこには黒い上下の質素な服を着たいかにも犯罪者な者達が武装していた。
「まずい…ウォーマット様。すぐそこの木製の扉が見えますか?」
「ああ」
「あそこの部屋には隠し扉があります。暖炉が回転して部屋と部屋の間の通路に出られます。そこを真っ直ぐ進んでいけば部屋に着く筈です。その部屋からも地下へと続く隠し扉があります。赤い本を引っ張ってください」
「……お主は?」
「私はここで奴らの足止めをします。さあ」
「…分かった。後で会おう」
「…ええ」
そう言うとウォーマットは兵士と別れ、言われた部屋へと入る。
「暖炉…これか」
ウォーマットは早速暖炉を見つけて近付く。
「回転すると言っていたが…」
そう言ってウォーマットは暖炉の中の壁を触ってみる。
すると、一部が動くことに気が付いた。
「これだな」
その部分を押すとガタンという音と共に壁が少し回転し隙間が見える。
「…先を急ごう」
ウォーマットはそこから下へと続く階段を進んでいく。
「全く…こんな歳をとってから命の危機に二度も合うとはな…人生、どうなるか分からんもんだ」
と、独り言を言っていると、行き止まりに着いた。
「ふむ。どこかに扉がある筈だ」
壁を探る。
と、先程と同様に一部だけ動く部分があった。
それを押すと、どこかの部屋へ出たウォーマット。
と、その時、
「誰!」
「!?」
ウォーマットは声がした方を向く。
すると、そこにはこの国の王妃、サリアが小さなナイフを持っていた。
「あなたは…」
「これはこれは王妃様ではないか。どうしてまだこんなところに?とっくに逃げているものだとばかり」
「…失礼しました、ウォーマット様」
そう言ってナイフをしまうサリア。
「実は、地下へと続く道が次々と壊されているみたいでして」
「ふむ。では、あの大きな音は」
「ええ。脱獄した者の中にこの城に詳しい者がいるみたいです」
「…それでここにいる訳か。では、先を急ぐといい。ここは危険じゃ」
「ええ。急ぎま…」
と、その時、扉のドアノブが破壊された。
「王妃様よ。ワシを置いて先を急げ」
「ですが…」
「ジジイの命と一国の王妃の命では比べ物にならんじゃろう」
「……」
「さあ」
ウォーマットが力強く言うとサリアは慌てたように赤い本が置いてある本棚へ。
と、その時、扉が勢いよく破壊され、部屋に男が一人入ってきた。
「おやおや。地下へと続く道を〜破壊して回っていたのですが…まさ〜かこんなところに王妃様がいるとは、私は運がいい〜ですね」
その男は筋骨隆々の体なのにも関わらずお腹だけが異様に太っている喋りが特徴的な男。
「あなたはアーク・ライザッド!」
「あひゃひゃ! 私のことを覚えていましたか!」
「誰じゃ」
「一度この国を乗っ取ろうとした元貴族の裏切り者です」
「これは酷い言われようですね! まあ、間違いではないで〜すが!」
「……」
「面倒な敵に再会したみたいだな…」
「敵…確かにそうですね。さて、そろそろあなたのことを人質にしようと思うのですが…」
その瞬間、サリアは赤い本へ手を伸ばして手前に引く。
すると、ガタンという音と共に本棚が動き出した。
「悪あがきですね!」
そう言うとライザッドは拳銃を取り出し王妃へと向けた。
「……」
固まる王妃。
すると、そんな様子を見たライザッドはニヤリと笑い引き金を引こうとしたその時、
「今じゃ! 早く逃げろ!」
ウォーマットがそう言ってライザッドへ抱き付いた。
と、同時に一発の銃声が鳴るがサリアには当たらず、その隙を見て地下へと続く階段を進んだ。
「やってくれましたね」
そう言って銃口をウォーマットへと向けるライザッド。
「いいのか? こんなところで引き金を引いて」
「?! あなた私の爆薬を…」
ライザッドとウォーマットの床には火薬が流れ落ちていた。
「爆発して回っていたのなら持っていて当然だ。ここで今それを使ったら爆発する可能性があるぞ?」
「ぐっ…」
「それに起爆用のマッチは今ワシが持ってる。下手なことをしない方がいい」
「……あなたも死ぬのですよ?」
「ワシは本来死んでいる筈の命じゃ。それに後少しのジジイの命。それがこの国の王妃の命を救うとなれば儲けもんじゃ」
「…分かりました。あなたの言う通りにし~ましょう」
「では、何もせずにここから逃げろ。それだけでいい」
「……王妃の命は諦めろと?」
「そうだ」
「これ以上の絶好の機会は無いのですよ」
「これから先の人生が無くなるのとどっちがいい?」
そう言うとウォーマットはニヤリと笑う。
「分かりました。今は引きましょう! ですが、必ず殺しに来ますよ」
「……」
そう言うと、ライザッドは慎重にウォーマットから離れる。
銃口は向けたまま徐々に離れ、部屋の入り口付近まで離れるライザッド。
すると、ライザッドはニヤリと笑い、
「ここまで来れば!」
「!?」
引き金に指を掛けた。
次の瞬間、ライザッドの右腕が地面へと落ちた。
「ぐぬっ…?!」
「また会うことになるとは」
ウォーマットの視線の先には紅の刀を持つエルフィンが立っていた。
「どうしてここが…」
「地下への入り口はお前が壊したんだろ? 探す場所が減って助かった」
「……まさか裏目に出るとは…」
「貴様、一度ならず二度までも。それも我が戦友を殺そうとするとは」
「私は自分の計画を遂行しようとしたまでですよ!」
ライザッドはそう言うと自分の落ちた腕から拳銃を取ってエルフィンへ向ける。
と、バンという音と共に一発の弾丸が放たれる。
しかし、エルフィンはそれを刀で斬ると、
「お前はまた眠っていろ」
そう言ってライザッドへと刀を突き刺した。
すると、前の時同様にみるみるうちにライザッドが痩せていく。
「やれやれ。急いできて正解でしたね」
ウォーマットへ手を伸ばすエルフィン。
ウォーマットはその手を掴むと立ち上がった。
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