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シンとレンの十二の冒険  作者: くらいね
第二章 七つの罪人編
183/206

183話 サレサとレイオーネ

 時は少し遡り、王都リネオスの広場から少し離れたところにて、


「クア!」


「逃げないで」


 サレサがサーシャからの奇襲攻撃を受けていた。

 サレサは何度も姿が消えては襲ってくるサーシャの攻撃を躱し、頼まれた王城へと向かっていた。


(どうしよう。このままだといつかやられちゃうよ。少しでも早く行きたいのに…)


 サレサは焦る気持ちを抑えながらサーシャの攻撃を躱す。


「体が小さくてすばしっこい…」


 サーシャは相変わらずの無表情で淡々とサレサの命を狙う。

 と、その時、王城へと真っ直ぐ向かっていたサレサは家の角を曲がって遠回りを始めた。


「そっちに行くの?」


 そんなサレサの様子を見て不思議に思いながらも直ぐにその後を追うサーシャ。

 それからサレサはサーシャの攻撃を躱しながら何度も家の角を曲がって行く。


「……どこに行くの?」


 サーシャがそんなことを言う。

 が、サレサには作戦があった。

 グラートが話していたことだ。


「クア!」


 サレサは目的のものを見つけて急ぐ。


「…? 衛兵?」


 そこは石造りの建物で入り口の扉にはリネオス兵士が二人立っていた。


(あった。言っていたやつだ)


「ここに一体なんの用が…待ち伏せ…? ううん。そんなのどうでもいい」


 サーシャの姿が消える。

 すると、


「おい、アレ魔物じゃないか?」


「何?!」


 立っていたリネオス兵がサレサに気付く。

 が、サレサの魔物の姿を見たことがなかった兵士達は武器を構える。


(こうなったら仕方ない…)


 次の瞬間、サレサは体に電気を纏いそれを木製の扉目掛けて放った。


「うわっ?!」


「避けろ!」


 サレサの放電を避ける為に兵士が扉から離れる。

 すると、電撃は扉へ直撃し、粉々に粉砕した。


「私が兵士を倒そうとしたのにどうして攻撃した?」


 サーシャが現れサレサを攻撃する。

 しかし、サレサはサーシャの問いに答えずそのまま建物の中へ。

 そして、サレサは中を確認すると再び体に電気を纏い床の一部分へ放電する。

 と、そこの床が壊れ、下へと続く階段が見えた。


「クア!」


 それを確認したサレサは下へと続く階段を急ぐ。


「こんなところに階段…ホントにどこに行こうとしてるの……面倒だけど追わないと…」


 サーシャがサレサの後を追った。




 サレサが階段を下っていると終わりが見える。

 そこは石造りで出来ており、周りは蔦や苔などで覆われ、道の両端には綺麗な光を放っている水が流れていた。


(ここがグラートの言ってた地下水道)


 走りながら周りを観察するサレサ。

 と、その時、


「見つけた」


「!」


 声がした方へ振り返るとそこにはサーシャが走って向かって来ていた。


「寄りによってダンジョンに逃げるなんて。面倒…」


 サーシャは走りながらそんな愚痴を漏らす。


「どこに繋がってるのか知らないけど邪魔が入らなそうなのはいい」


「……」


(どうしよう…このまま行っても王城が更に混乱するだけかもだし…)


 と、そこでサレサは以前にウォーマットから言われたことを思い出す。


(この子のことを気に掛けてあげてって言ってたけど……フラージュの孫…)


 次の瞬間、サレサは魔物の姿から人の姿へと変身する。


「…! 人の姿に…」


「あなた、フラージュの孫なんでしょ?」


「えっ…? どうして…?」


 いきなりのことに戸惑う様子のサーシャ。


「私はフラージュと一緒に旅をしていたことがあるの」


「フラージュと? でもあなたは子供じゃない」


「それは見た目だけね。これでも大人なの」


「……」


「あなた、本当はこんなことしたくないんじゃない?」


「……いきなり何を言うの」


「あなたはこうするしか生きる道が無かったって聞いたから」


「…知ったような口を聞かないで!」


「……否定はしないんだね」


「うるさい…これは私が決めたことなの。だから、最期までやりきる」


「それは本当にあなたが望むことなの?」


「……」


「……」


 無言の時間が流れる。

 と、その時、ガタッという音がサレサの踏んだ場所からした。


「?」


 サレサは不思議に思いながらも先を急ぐ。


「今少しだけ床の一部が下がったような」


 サレサの後ろを追うサーシャが言う。

 すると、その時、サレサの耳がピクピクと動く。


「何か聞こえる」


 そう言うと走るのを止め、その場に留まるサレサ。

 そんな様子を見たサーシャは、


「何のつもり? 観念したの?」


 サレサにサーベルを構えながらその場に留まる。

と、その時、サレサがくるりとサーシャの方へ振り返る。

 そして、


「水が来る」


「…何を言って…」


「いいから早く戻って!」


「そうやって逃げようとし…」


 と、サーシャがそこまで言い掛けたところで何かの音が聞こえた。


「あ…ほら、早く! 急いで!」


「?! ちょっと!」


 サレサはサーシャの手を握ると引っ張って来た道を戻る。


「離して!」


「やだ!」


 と、そんな会話をしている二人の後ろから物凄い勢いの水が迫ってきていた。


「思ったより早い…」


「能力が使えれば…」


 二人は全力で走る。

 が、水はそんな二人を追い越す勢いで迫る。

 そして、


「「!!!」」


 二人は水に呑み込まれた。




「ケホッ…」


 水に呑み込まれたサレサが座り込みながら咳をする。

 すると、


「どうして私の手を引っ張ったの…」


 サーシャも座り込み下を向きながら聞く。


「どうしてって…それは…」


「私がフラージュの孫だから…そうでしょ?」


「……」


 二人の視線が合う。


「私はフラージュじゃない。あなたは私にフラージュの面影を見てるみたいだけど、私はサーシャ・レイオーネ。フラージュじゃない」


「それは分かってる。あなたがフラージュじゃないってこと。でも、彼女の家族が困ってるって聞いたらほっとけないよ」


「家族…でも、もうその家族はいない」


「……」


 サレサはウォーマットから聞かされた話を思い出す。


「それに私は困ってない。昔は今より色々考えることもあったけどもう慣れた」


「それは慣れてるんじゃないよ。慣れてるフリをしてるだけよ!」


 サーシャの言葉にサレサが訴える。


「考えないようにして自分を騙しているだけ。本当は今も苦しんでるんじゃないの?」


「苦しんでる? 私が? そんな資格ないのに? 生きていく為に色んな犯罪をしてきた。今までは何とか人を殺さずに来たけど…正直それももう限界かも。私はもう…戻れないところまで来ちゃってるの…」


「…!」


 サーシャのその時の顔に、サレサはフラージュと分かれた時のことを思い出した。


(あの時と同じ顔…このまま放っておいたら消えちゃいそう)


 サレサは立ち上がり、サーシャへ近付く。


「……」


 それをサーシャは警戒しながら見守る。


「……」


「……」


 何も言わずにまた沈黙する二人。

 サーシャは何をするつもりなのかと訝しげな視線を向ける。

 と、その時、サレサはサーシャへと近付く。

 すると、自然とサーシャのサーベル掴む手に力が入る。


「……何するつも…?!」


 その瞬間、サレサがサーシャへ抱き付いた。


「な、何するの?!」


 困惑するサーシャ。


「もう無理しないで!」


「…! だから、あなたに何が…」


「分かるよ! あなたの表情がフラージュが辛い時の表情と同じだもん」


「っ……」


「あなたは自分を騙して無理矢理大丈夫なように演じてるけど本当は辛くて、苦しくて、楽になりたい。だから、何も考えずに従っているだけでいい今の状況がいいんでしょ?」

「でも、それじゃダメだよ! あなたはあなたの為に生きないと! 誰かに動かされる人生なんて、そんなのダメだよ!」


「……私は…」


 サレサの訴えてくる顔がサーシャの心を動揺させた。

 どうしてこんなに自分に言ってくるのだろうか。

 どうして私なんかに、と。

 そして、それがサーシャはとても怖かった。

 自分が止めた筈の感情が、鼓動がまた動き出しそうで。


「今ならまだやり直せるよ! 私も手伝うから。あなたの友達として」


「友達…」


 久々に聞いたその言葉にサーシャは思わずクスッと笑みがこぼれた。

 それはサレサが初めて見た彼女の笑顔で、そして、サーシャにとっても一人になって初めて心が緩んだ瞬間だった。


「えっ…」


 だからだろうか、サーシャの意志とは関係なく涙が溢れ出た。


「っ…どうして…」


 何度も涙を拭うがそれでも溢れ出てくる。


「っ……!」


 訳が分からなくなったサーシャはサーベルを握る手に力を込める。

 そして、この場から離れようと能力を使おうとするが、瞬間移動の能力が発動することはなく離れることが出来ない。

すると、


「今逃げようとしたでしょ?! もう離さないからね!」


 サレサはそう言ってサーシャを抱き締める力を強める。

 サーシャはそれがなんだか心強くて安心した。


「ありがとう…」


 消え入りそうな小さい声でサーシャはそう言った。




 それからサーシャが落ち着くまでサレサは抱き付くことを止めなかったのだが、


「もう大丈夫だから…逃げないから…」


「そう言ってまた逃げ出す気なんじゃ…」


 サレサはサーシャが逃げ出すのではないのかと彼女が何を言っても抱き付くことを止めなかった。


「大丈夫。逃げない」


「ほんとかな…」


「だったら…」


 と、そこでサーシャはサーベルをサレサへ渡そうとする。


「これ、預かっていいよ」


「えっ…?! いや、でも…」


「あなたなら大丈夫。でしょ?」


「うん…まあ…そうだけど…」


 突然のことに困惑しつつもサーベルを受け取るサレサ。

 と、その時、


「ねぇ、私気になってたことがあるんだけど」


「気になってたこと?」


「うん。あなたの名前。私知らない」


「ああ…」


 サーシャに言われて確かにと思うサレサ。

 と、それと同時に、


「名前も知らないのに自分の神器を渡したの?」


 思わずそう言う。

 すると、サーシャは二度目の笑みを浮かべながら、


「そう。あなただから渡したの」


「…! そ、そっか…」


 真っ直ぐ目を見られながら言われたその言葉がサレサにとってはとても嬉しくて照れてしまう。


「私はサーシャ・レイオーネ。あなたは?」


「わ、私は…名前が長いからサレサって呼んで?」


「うん。分かった。サレサ。今度、ちゃんと名前を聞かせてね」


「うん…」


 サレサは照れくさそうに言う。


「ところで、この後はどうするの?」


 ふんわりとしていた二人だったがサーシャが言う。


「あっ! そうだ王城へ急がないと!」


「でも、道分かるの? 流されてここがどこかも…」


「大丈夫。何となく分かるから」


「へぇ…」


「ほら!行くよ!」


「あっ…ちょっと…!」


 サーシャの手を引いてサレサは王城へと急いだ。




 それからサーシャとサレサはしばらく歩いていたのだが、


「っ……! 止まって!」


「? どうしたの?」


「誰か来る」


「こんなところに?」


「……スン…スン…この匂い…もしかして……急ごう!」


「えっ? うん…」


 サレサに連れられてサーシャは後を付いて行く。


「一体誰がこんなところに…」


「多分だけど…!近い!」


「……」


 サーシャは警戒しながら前の方を警戒する。

 と、その時、


「居た!」


「アレは…」


「……? サレサちゃん?! どうしてこんなところに…! それにあなたは…!」


 二人の前にいた人物。

 それはこの国の王妃、サリアだった。


「サレサちゃん…まさか操られて…」


「違うよ! 色々あったの! 今は一緒に行動してるの」


「……」


 訝しげな視線をサーシャへ向けるサリア。

 そんな彼女の様子を見たサーシャは、


「こんなところに王妃がいるとは驚いた。大丈夫。私はあなたのことを襲ったりしない。この子に…サレサに誓って」


「……」


 そこでサリアは二人が手を繋いでいることに気が付いた。


「分かったわ」


「それで、どうして王妃がこんなところに一人で居るの?」


「……」


 サリアは少し黙ると何があったのかを二人に話し出した。

見てくれてありがとうございます。

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