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神童  作者: クロ
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相似

最近のトキ様はひどくお疲れになっていた。


以前からお仕事の手伝いはされていたが、以前にも増して、そちらに力を入れていらっしゃるようだった。


だからといって、学業を疎かにしているのかといえば、そうでもなく、むしろ私との関係が友人に戻ったことで、共に過ごす時間のほとんどが課題に留まらない更なる学習へとなり、仕事も勉強も量が増えていた。


そんなある日、何やら思い詰めたような表情でトキ様が話しかけてきた。



「ユーリ、ちょっと相談したいことがあるんだけど、今いいかな?」



「もちろんです。どうなさったのですか?」



「まず、これを見てほしいんだけど・・・」


そう言って渡された資料は何かのグラフのようだった。

詳しい情報を得ようと資料を読んでいると更に言葉が続けられた。



「それは、サンジェルマン家で作っている自動車の事故のデータだよ。」



「サンジェルマン家の自動車といえば高い安全性で評判でしたよね。」



「そうなんだ。決して安いとは言えないけれど、自動車の不具合による事故がほとんど起きていないんだ。」



さすがはサンジェルマン家。ざっと見るだけで分かるぐらい、明らかに他家よりも事故数が少ない。



「その評判は知っていましたが、こうやってデータで見ると明らかですね。他家のものよりも格段に事故数が少ないです。これに何か問題があるのですか?」



深刻な表情で渡されたものだから、どんな酷いデータが見せられるのだろうと思っていたのに実際は素晴らしいとさえ言えるデータ。ならばあの表情は何だったというのだろうか。



「やっぱりユーリでもそう思うんだ。次のページも見てくれる?

それは、去年のデータなんだ。」



次に渡されたデータも相変わらず他家とは一線を画す事故の少なさだった。けれど僅かながら去年よりも増加していることが見て取れる。



「見て解ると思うけど去年までは事故がほとんどなかったんだ。今年だって確かに他家と比べれば悪くない。むしろ素晴らしいとさえ言える。だけど確実に去年より悪化しているんだよ。」



トキ様はこの変化を不安な思っていらっしゃったからあのような表情をされていたんだろう。私自身はっきりとは言えないが何か気にかかる。そして、僅かでも気になることがあるなら早めに対処必要がある。まずは旦那様に知らせないことには何も始まらない。



「このことは旦那様に伝えられたのですか?」



「もちろん伝えたよ。だけど父さんは、これくらい大したことではないと言って、本気で取り合ってくれなかったんだ。でもどうしても納得できなくてユーリに相談したんだ。」



旦那様は特に問題視していないのか。

だけどこの僅かな悪化が妙に気にかかる。

何か大事な何かを忘れているような気がしてならなかった。



「確かに私も気になりますので、少し私の方でも調べてみます。」



「それじゃあ、ユーリが大変だよ。調べるのは自分でやるから大丈夫。」



「いえ、私はトキ様の許可さえ頂ければ自由に使える時間がありますので、私が行います。トキ様は旦那様のお仕事を手伝われていて、お忙しいでしょう?」



ただでさえ、最近は仕事に勉強にとトキ様はお忙しいのに、これ以上の負担はかけられない。

それに、この漠然とした不安感。

これが何なのかじっくり一人で考えたかった。



「でも、僕が言い出したことなのに・・・」



「トキ様には、今やるべきことがたくさんあるはずです。それを疎かにしてしまっては全てが水の泡です。

毎日の勉強の時に必ず経過を報告します。その際に今回の資料のような私では手に入らないものをお願いするかもしれません。ですが、それ以外は私に任せて下さい。

それとも私では安心して任せられませんか?」



トキ様が私を信じてないなんて、少しも思ってない。だけど、それを疑うように問えば案の定トキ様は私に全てをまかせて下さった。

この信頼に応えるために、何としても原因を探し出さなければ。






とは言え、そう簡単に解決するはずがなかった。

それどころか少しずつではあるが、確実に事故数は増えていた。

まだ他家よりは低いとはいえ、ここまでくればもはや疑惑は確信に変わった。偶然だなんてありえない。

このままではいずれ事故数も増えつづけ、サンジェルマン家は信用を失ってしまうだろう・・・



信用・・・?



やっと分かった。

どこかで感じていたこの不安感。


今の状況はまさにかつてのトリアノン家そのもの。


品質が売りの商品、そして徐々に増えてきた粗悪品。


あの時は気付いた時には遅すぎた。

だけど、今は違う。

トキ様が気付いて下さったおかげで問題が表面化するまえに、知ることができた。

だからといって、決して余裕がある訳ではない。

とにかく、早くトキ様に、そして旦那様に知らせなければ。





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