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神童  作者: クロ
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戸惑い

二週間で完治させて、休んでご迷惑をおかけしてしまった分、しっかりとお仕えしようと思っていたのに、実際には一ヶ月もかかってしまった。


トキ様がお見舞いに来てくださった後の夜、突然の高熱により生死をさ迷うことになったのだ。


ナイフで腹部を刺されたにも係わらず、傷は思ったより浅く、特に一日熱もでることもなく、落ち着いていたことから、自分自身を含めて誰もが安心していたために発見が遅れた。


余りの苦しさに身体が動かず声もあげられずにこのまま朝まで我慢するしかないのかと朦朧とする意識の私を発見したのはトキ様だった。


一度は部屋に引き上げたものの、寝る前にもう一度話がしたいと思ってくださったらしい。


すでに寝ていれば、それはそれで構わない。


そんな気持ちで入った部屋で見つけたのが、真っ赤な顔をした私が、呼吸も荒く、ただただベットの端でうずくまっていた姿らしい。


トキ様が慌てて使用人を呼び、ほどなくしてお医者様も来てくださったらしいが、あまりの高熱に身体は一気に弱り、少し熱がひいたと思えば、ぶり返し、安定したと思えば再び生死をさまようかのような容体に陥ったり、ということを繰り返していたらしい。


らしいというのは、私の意識はその間ずっと朦朧としており、意識が戻り、自分の周りが見えてきたのは1週間がたったころだった。



1週間も寝込んでいた身体に体力と言うものが残っているはずもなく、まして、お腹を刺されるというけがを負っていた私は、学校に行けるほど回復したのは、事件からすでに1カ月がたったころだった。



目を覚ましてから、トキ様は、こちらが戸惑うくらい優しかった。

もちろん今までもトキ様は優しかったし、いつでも笑いかけてくださってはいたが、なんというか、優しというよりは、甘やかされてしまった気がした。


私はトキ様に仕えるべきであり、主人であるトキ様にそんなことはさせられないと何度も言ったが、一度も聞き入れてはもらえず、起き上がれるまでは、いつもそばにいてくださって、学校には行けないものの、起き上がれるようになってからは、トキ様がその日学校で習ったことを教えてくださり、課題を一緒に行ったりした。


やっていること自体は授業の復習と言う単純なものではあったが、なんというか、やっぱり一つ一つの動作が甘い気がした。



さすがに、学校に復帰してからは、いつも通りになった気がして、安心していたけど、相変わらず笑いかけてくださるその微笑みは糖度が増したような気がしてならなかった。



そんな、変化に戸惑っていた、復帰から一週間後、アートに、帰りに街に遊びに行こうと誘われた。


「ユーリも元気になったことだし、久しぶりに街にでも行かないか?」


「ユーリ、体調はもう大丈夫か?無理なら、やめておこうよ。」


「私はもう大丈夫ですよ。4人で出掛けるのは久しぶりなので楽しみです。」


「よし、ユーリもそう言っていることだし、行くぞ。」



そうして、久しぶりに街に出かけ、ひとしきりぶらぶらしたところで、一つの雑貨屋さんに入ろうということになった。



「トキ、こんなかで、なんか気にいったもんある?」


「いや、特にないけど・・・

・・・あっこれとかよくないか。」


そういってトキ様が取り上げたのは一つの写真立て。

確かにシンプルでいて、透き通ったグリーンがベースになっている写真立てはとても素敵だ。


だけど、写真なんて、写真屋さんで撮ってもらわない限り撮れないし、それだって、たった一枚で写真立てと同じくらいの値段がする。


「じゃあ、それが俺からのプレゼントだ。

トキ、明日が誕生日だろう?」


「えっトキ様、明日が誕生日だったんですか!知りませんでした。

トキ様、他に気に入った物とかないですか?」


トキ様の誕生日を今まで知らなかったなんて不覚だった。

これまであんなにも優しくしてくださったトキ様に何か返すチャンスだったのに。


「いや、ユーリから何かもらおうとは思ってないよ。

それに、アートからだってその写真立てをもらうつもりはないよ。

確かに素敵なデザインだけど、それにふさわしい写真なんてないしね。」


「写真なら今から撮りに行こう。写真立てはアートにもらって、写真は僕からプレゼントしよう。」


最初は遠慮していたトキ様も、4人での写真を飾るというのに惹かれたらしく、二人からのプレゼントをもらうことにした。

アートもエリックもすごい。2人で一つのプレゼントで、素敵なものを渡すだなんて。

それに比べて私は何も返せていない。


でも、私からはいらないと言われた以上、ここで何か買ってもトキ様は喜んではくださらないだろう。

むしろ、私にお金を遣わせたことを気にして、困ってしまうだろう。


どうすればいいんだろうか・・・



悩んでいるうちに、写真は撮り終わり、気がつけばすでに家に帰りついてしまっていた。



「ユーリ、さっきから何を考えこんでいるの?」


「すみません、何でもないんです。」


「もしかして、さっきのこと気にしてる?」


「はい、明日がトキ様の誕生日だったなんて初めて知りましたが、やっぱり何か差し上げたいんです。

トキ様にはいつもお世話になってばかりですので。」


「僕の方がユーリにお世話になりっぱなしだと思うけどね。


だったら、欲しいものがあるんだけどいい?」


「もちろんです。何ですか?」


よかった、これでトキ様に何か贈ることができる。


「ユーリの時間。

明日は一日ずっと一緒に居てほしい。

パーティー中も、終わってからもずっと。だめかな?」


「それぐらいでしたら、いくらでも・・・


すいません、パーティ中は無理です。人手が足りないので、手伝うことになっているので。」


「じゃあ、終わってからだけでもいいよ。

ユーリの休む時間を邪魔してしまうけどいい?」


「もちろんです。こんなことしかできなくてすいません。」


「大切な時間を、一番の友達と過ごせるのが何よりうれしいよ。ありがとう。」




トキ様と別れて部屋に戻ったけど、本当に時間だけでいいんだろうか・・・・


そうだ、ケーキを作ろう。トキ様は甘いものがお好きだし、パーティではあまり食事はできないだろうし。

今日のうちに作っておいて、明日パーティが終わった後に渡そう。


ようやく明日のめどが立って、さっそく、そっと部屋を出て、ケーキを作ることにした。













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