病床の面会簿
橋の医療所で、テラは面会者の名簿を改めた。軍の身分がない家族ほど、病人へ会うまで時間がかかる。傷を負った兵の親は門で止められ、遠い町から来た者が何日も待っていた。
役人は身元を確かめなければ危険だと説明した。テラもそれを理解している。以前、病院の位置を探るため負傷者を装った者がいたと聞いていたからだ。
彼女は病床ごとに面会できる時間を分け、家族を知る医療係が立ち会う案を作った。門で名を確認するだけでは、名前が違う土地に住む人を区別できない。
そこへ北部ラウゼから女性が来た。息子がいると聞いたが、医療所の名簿には載っていない。木札に描かれた家の印を見せると、テラは亡くなった少年兵の墓を思い出した。
女性は墓へ連れて行ってほしいと願った。テラはすぐ答えられなかった。息子だと確かめるには、まだ一つ名前が足りなかったからだ。
二人で丘へ上がると、女性は墓標の模様を見て膝をついた。その印は家の戸口にも彫ってあるという。テラは静かに身を引いた。
墓地の土はまだ新しく、雨が降るたび少しずつ沈んでいた。女性は墓の周りへ小石を並べ、息子が家で好きだった木の実を置いた。テラはそれを止めず、墓の管理者へ知らせておくと約束した。別の宗派の死者も眠る丘では、祈り方を一つに揃えられない。女性が去ったあと、医療所の若い助手が墓標を倒さないよう支え木を打ち、次の雨に備えた。
夕方、女性は医療所へ戻り、息子が最後に持っていた木札の写しを頼んだ。帰郷して父親へ見せるためだった。テラは紙を渡し、病床の面会簿とは別の欄へ、その訪問の日付を記した。




