錆びた階段
東岸の首府で、廃墟の高層建物から鉄を運び出す計画が始まった。鍛冶親方リゼルは、取り外せる階段の手すりを調べに行った。かつて数百人が働いたという建物には、今は鳥が巣を作り、雨水が階段へ流れ込んでいた。
同行した役人は使える鉄をすべて剣にすべきだと主張した。北で戦いが続き、盾の金具も足りない。ところが階段の下には、近所の老人が隠していた水汲みの桶が並んでいた。建物の屋根に溜まる雨を集め、乾いた季節の飲み水にしていたのだ。
「ここを壊せば、雨が別の場所へ落ちる」リゼルが言った。
役人は鉄を取れないなら調査の意味がないと怒った。しかし親方は、手すりのうち水路を支えていない部分だけを選び、印を付けた。すべて切れば短い時間で大量の材料になるが、建物が崩れて人を傷つけるかもしれない。
作業の日、若い弟子が手すりを引くと、裏側から古い紙片が落ちた。文字はかすれて読めなかったが、黄色い花の絵が描かれていた。弟子はそれを拾い、水桶の老人へ渡した。
老人は昔、ここに子どもたちが描いた絵が飾られていたと聞いているという。何の建物だったかは知らない。
鉄を運び出す人足は、建物の上階へ登るのを怖がった。階段の一部が落ち、足元から階下が見えるからだ。リゼルは作業の前に残った踏み板を確かめ、危険な階を封鎖した。役人は手間を惜しんだが、事故が起きれば鉄どころか運び手まで失う。作業を終えた者へ支払う賃金も、運び出した重量だけでなく危険な場所にいた時間を考慮して決められた。
運び出された鉄は予想の半分だった。リゼルは剣の修理用と水車の金具用に分けた。夕方、老人が桶へ落ちる雨音を聞きに戻ってきた。階段の手すりは少し減ったが、水は途切れていなかった。




