葦刈りの境
ネサとドルケの境の湿地では、冬の葦刈りが始まった。葦は屋根や寝床に使うため、両市の貧しい家に欠かせない。去年まで共用だった刈り場に、今年はドルケの盾兵が立っていた。
ネサの女性たちは剣士を連れて来ず、刈り取りに必要な鎌だけを持っていた。兵は境を越えるなと命じた。彼女たちの鎌は武器ではなく収穫道具だが、兵はその違いを認めようとしなかった。
刈り手の一人が、北風で倒れた葦を指した。倒れたものを放置すれば水路が詰まる。ドルケ側の家も困ると説明したが、兵は上官に聞かなければ返事できなかった。
待つ間、女性たちは境の手前で刈れる分だけ集めた。束はいつもの三分の一にも満たなかった。
午後、ドルケの水番が来た。彼は葦が詰まった排水溝を見て、女性たちへ作業を頼んだ。盾兵は許可のない者を通せないと言い、水番は市の生活を守るのも兵の仕事だと返した。
結局、兵二人が付き添う条件で刈り取りが許された。女性たちは刈った葦を両岸へ分け、水路に落ちた葉を拾った。
刈り取った葦は濡れたまま屋根へ上げると腐る。女性たちは両市の干し場を使う必要があったが、兵はその移動まで許可したつもりはなかった。水番は書面へ干し場の位置も加え、刈り手が往復できる時間を求めた。小さな一枚の許可書でも、生活に必要な作業を漏らせば役に立たない。冬の風が吹く前に葦を乾かせるかが、家々の関心だった。
暮れかけた湿地には、葦の切り株が続いていた。境を示す杭は残ったまま、それより細い足跡が何本も交差している。家へ帰る女性は束を抱え、次に兵が替わっても同じことができるかと心配した。水番は書面を作ると約束したが、その上官が認めるかは分からなかった。




