湿原の長靴
オーデンの故郷、湿原都市ネサには、足首まで泥に沈む道が多かった。戦争が始まってから板道の修理が遅れ、街の子どもは長靴を共有して学校へ通っていた。革職人リームは大人用の靴を切り詰め、子どもの足に合わせていた。
ネサは隣の都市と水門を争い、街の出口には剣と盾を持つ兵が並んでいた。だが兵の使う乾いた板道は、学校への道とは別だった。リームは市の議会へ、板を少し回してほしいと願い出た。
議員は軍の通路が優先だと言った。リームは反対せず、昨日学校へ来られなかった七人の名を置いた。
「長靴を持たない子が増えれば、ここで字を読める人間が減ります」
議会は兵道の端から板を取ることを認めなかった。代わりに倉にある古い舟の船板を学校へ回すよう指示した。板は反っており、まっすぐ敷くには職人の手が要る。
リームは靴職人仲間と舟大工を呼び、板の端に継ぎ木を入れた。足元の泥を覆うだけの細い道ができた。
翌朝、学校へ来た少女は片方だけ違う色の長靴を履いていた。靴は共有で、左右の組み合わせなど選べない。それでも泥に足を取られず教室へ着いた。
舟板を運んだ子どもたちは、泥の浅い場所へ板を置こうとした。だが教師は、雨が降ると水の流れが変わると注意した。道を敷いた翌日に沈んでは意味がない。リームは大人の靴を直すために集めていた革を少し裂き、板と板の間に滑り止めを張った。完成した道は細く、すれ違うときはどちらかが待つ。それでも足跡を泥から守る仕事になった。
都市の水門には新しい兵が配置された。議会が戦争を止めたわけではない。ほんの一筋、兵ではない者が通る道を増やしただけだった。




