門番トーマの値札
南の関所で通行料を取るトーマは、門の修理費を集め終えていた。だが料金を下げると、次の冬に壊れたときの費用がなくなる。住人たちの会議は、額を据え置くかどうかで割れた。
門の内側には国を失った者が多く、誰も自分たちの新しい税を快く思っていない。しかし通行料をなくせば、食料を買えない家が出る。トーマは古い札を掲げたまま、商隊を一日に三組しか通さなかった。
商人ナゼルが到着し、待ち時間の損失を書いた帳面を示した。「門で払うより、ここで泊まる費用が高い」
トーマの妻は、待たされる旅人が買う水と食事で住民が稼いでいることも明かした。門を速く開くことは、彼らの収入を減らすことでもある。
会議では日払いの修理基金を残し、宿の仕事を担う者には街道整備の賃金を出す案が生まれた。旅人を足止めすることで暮らすより、道を通れるようにする仕事へ移るためだ。
その晩、門の古参兵がトーマに「軍旗を掲げればもっと容易に徴収できる」と言った。トーマは、旗を持てば旗の主から命令も届く、と答えた。
住民の中には、門の修理に参加できない病人や老人がいた。労働を条件に通行料を減らせば、その者たちだけ負担が重くなる。トーマの妻は看病や食事作りも共同の仕事として数えるよう提案した。修理へ出る若者が安心して家を空けられるからだ。会議では初め笑う者もいたが、子を預けている兵が賛成したことで、仕事の一覧が書き改められた。
翌朝、料金の札には新しい数字が書き足された。旅人一人から取る額は下がり、大きな荷車には橋板の摩耗に応じた費用が付いた。最初に払った商人は文句を言いながらも、日暮れ前に門を抜けられた。門の蝶番は、新しく塗った油で静かに動いた。




