セリアの予備盾
北方の巡察隊が戻ると、盾を失った兵が四人いた。敵と戦ったわけではない。崩れた坂を越える際、荷を支えようとして谷底へ落としたのだ。隊長は兵を叱り、予備を支給してほしいとセリアに願い出た。
セリアは保管庫を開いた。使える盾は十三枚。新しく兵を集めれば、足りなくなる。しかも北の町では盾の板に向く木が不足し、修理には遠い森から材を運ぶ必要があった。
「落とした場所へ戻るな」と彼女は言った。回収を命じればさらに人が滑落する。代わりに盾を直す職人と話し合い、割れた板を継ぎ合わせて訓練用から前線用へ戻せるものを選んだ。
四人のうち一人は、自分の盾を失ったことを隠していた。祖母が家の戸を外して作ってくれたものだという。規格外の盾は隊列を揃えにくいが、彼には守るべき記憶でもあった。
セリアは予備を渡したうえで、祖母へ材木の手配を申し出る手紙を書かせた。失った板は戻らない。それでも家へ修理の仕事が届けば、彼が何を守ってきたかを家族と話せる。
夕方、別の隊が峠の入口に見知らぬ足跡を見つけた。小規模な行軍らしいが、所属は分からない。セリアは捜索隊を増やさず、雪の残り方から通過した日を調べるよう命じた。
修理を担う職人は、盾の縁の金具を再利用する際、古い釘を抜いて並べた。曲がった釘を叩いて伸ばせば二度使えるが、折れかけたものは危険だという。兵たちは材料の量を見て、自分が新しい板を求めたときの重さを知った。セリアは全員へ盾を同じ日に配るのをやめ、地形の危険な巡察から優先すると決めた。それでも不公平を訴える声は残った。
兵は予備の盾を受け取り、腕の紐を短く結び直した。翌日の巡察へ出るとき、彼は落とした盾の代わりに新しい板が軋む音を聞いた。




