北方評議会の欠席者
グラウゼンの評議会には、山間の三集落から代表が来ていなかった。雪崩で道が閉じたためだ。都の議員たちは欠席を理由に採決を進めようとしたが、アーネは山村へ割り当てる薪の量が議題に含まれていると指摘した。
山では樹木が乏しく、冬の燃料を低地から運んでいた。塩と違って軽く背負うこともできない。代表なしで配分を減らせば、村から暮らす人間が消えるかもしれない。
議長は決定を延ばすことに不満を示した。軍の冬営にも薪が要る。凍えた兵では北の峠を守れない。
セリアから届いた報告には、山道を通せる人数の上限が書かれていた。道を広げれば雪が崩れやすくなる場所もあり、荷車を通す工事は春まで無理だという。
「送り届けられない薪を、帳面で渡しても意味はありません」アーネが言った。
評議会は現物の薪より先に、村が備えている泥炭の量を調べる使者を出した。採決は五日延期された。
議場を出た若い議員が、代表が来られない土地は政治に加わる資格も弱いのではないかと漏らした。アーネは彼を窓際へ連れて行き、連合の旗の下に並ぶ山地の名を一つずつ読ませた。
低地の議員は泥炭を薪の代わりにできるなら、山へ運ぶ量を減らせると言った。しかし山村の使者は、泥炭の煙で体調を崩す者がいることを伝えていた。アーネは燃料の種類だけで配分を決めず、家屋の炉と煙突の数も調べるよう頼んだ。山を遠くから見る評議員にとって、家の造りまで政治の判断に入れるのは初めてだった。
その日の夜、山村では使者の到着を知らないまま、家々が共同の炉で料理を作っていた。子どもが眠れば火を弱め、老人の部屋へ残り火を分ける。山の者たちが毎日続けてきた分配は、議場の数字より細かかった。




