河口の潮位柱
ルーヴェの堤防には、古い時代の水位を示す鉄柱が残っていた。町長イベラは毎朝、柱の傷を確かめていたが、湿原から来た職人オーデンは傷の位置が変だと言った。低いはずの潮が、昔の洪水線に近づいていた。
町の老人は柱が傾いたのだと主張した。若い船頭は河口の砂州が移ったのだと言う。誰も昔の測り方を覚えておらず、三つの意見が町の会合でぶつかった。
イベラは一人だけを正しいと決めず、石の岸壁にも印を刻ませた。潮が満ちる時刻を二日続けて測れば、柱の傾きと水そのものの高さを分けて考えられる。
測量に来た西岸の使者は、軍の工事を急ぐべきだと訴えた。川を渡る兵の道が浸かれば困るからだ。イベラは先に魚の干し場を移す必要があると答えた。干し場には十七軒の生計がかかっている。
夜半、波は予想より早く岸壁に当たった。眠っていた家族を起こす鐘が鳴り、港の魚籠が高台へ運ばれた。堤防は破れなかったが、下の畑に薄い海水が入った。
翌朝、オーデンは石の岸壁に残る潮の筋を指さした。鉄柱は傾いていない。海と川の押し合う場所が少し変わっていた。
港の鍛冶屋は水位柱を抜いて調べる案を出したが、老人たちが反対した。先代の洪水でそこまで水が来たという記憶が、柱に結びついているのだ。イベラは柱を残して測れる仕組みを選び、数値を読む者を二人ずつ組ませた。一人が読み間違えても、もう一人が確かめられる。高い潮の夜には見張りの老人も測量へ加わり、自分の目で傷との違いを認めた。
イベラは修理の順番を替え、海側の低い道を先に閉じることにした。橋の戦争がどう動こうと、潮は町の採決を待たない。港では漁師たちが濡れた網を広げ、使える魚を一尾ずつ確かめた。




