西岸の空欄
ヴァルドの司令部へ戻った人口調査には、奇妙な空欄があった。南部の三つの村について、家屋数だけが書かれ、住人の名がない。調査官は「軍への登録を拒んだ」と説明したが、ヴァルドは原本の筆跡が同じなのを見つけた。
村へ行くと、戸口には乾かした草束が下がっていた。兵が疫病を恐れて近づかないよう、住民が自分たちで付けた目印だという。実際には病人が一人いただけで、村の井戸が汚れたため人を寄せ付けなかった。
調査官は村の門前で引き返し、推測で家屋を数えていた。司令部の数字は、その誤りをそのまま保存していたのだ。
ヴァルドは同行した書記に、村人が名を告げるまで待つよう命じた。年寄りは軍の徴発を恐れ、若者は徴兵を恐れていた。何日待っても話さない家があるなら、空欄の理由を書けばよいと付け加えた。
夕方、一人の女性が井戸の検査を頼みに来た。彼女は戸籍のためではなく、子どもに飲ませる水が必要だった。軍の職人が井戸の縁を開くと、腐った木材が落ちていた。
司令官は資材の提供を決めたが、村へ兵を常駐させることはしなかった。住民が自分たちの名を渡す代わりに何を失うと考えているのか、まだ理解できなかったからだ。
村の端には、税を納められず軍の名簿から消えた鍛冶屋が住んでいた。書記が戸を叩くと、男は金槌の音を止めなかった。水を運ぶ女たちの手桶を直している最中だった。書記は仕事を終えるまで待ち、その代わり壊れた桶を一つ運んだ。男は結局名を名乗ったが、徴兵への同意ではないと念を押した。書記はその言葉も消さずに残した。
戻った書記は、空欄の横に細く「接触継続」と書いた。その文字は兵を増やす命令にも、徴税の根拠にもならなかった。数字の後ろにいる者を確かめる仕事だけが残った。




