↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四次世界大戦――剣と盾しか残らなかった世界で  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/180

西岸の空欄

ヴァルドの司令部へ戻った人口調査には、奇妙な空欄があった。南部の三つの村について、家屋数だけが書かれ、住人の名がない。調査官は「軍への登録を拒んだ」と説明したが、ヴァルドは原本の筆跡が同じなのを見つけた。

村へ行くと、戸口には乾かした草束が下がっていた。兵が疫病を恐れて近づかないよう、住民が自分たちで付けた目印だという。実際には病人が一人いただけで、村の井戸が汚れたため人を寄せ付けなかった。

調査官は村の門前で引き返し、推測で家屋を数えていた。司令部の数字は、その誤りをそのまま保存していたのだ。

ヴァルドは同行した書記に、村人が名を告げるまで待つよう命じた。年寄りは軍の徴発を恐れ、若者は徴兵を恐れていた。何日待っても話さない家があるなら、空欄の理由を書けばよいと付け加えた。

夕方、一人の女性が井戸の検査を頼みに来た。彼女は戸籍のためではなく、子どもに飲ませる水が必要だった。軍の職人が井戸の縁を開くと、腐った木材が落ちていた。

司令官は資材の提供を決めたが、村へ兵を常駐させることはしなかった。住民が自分たちの名を渡す代わりに何を失うと考えているのか、まだ理解できなかったからだ。

村の端には、税を納められず軍の名簿から消えた鍛冶屋が住んでいた。書記が戸を叩くと、男は金槌の音を止めなかった。水を運ぶ女たちの手桶を直している最中だった。書記は仕事を終えるまで待ち、その代わり壊れた桶を一つ運んだ。男は結局名を名乗ったが、徴兵への同意ではないと念を押した。書記はその言葉も消さずに残した。

戻った書記は、空欄の横に細く「接触継続」と書いた。その文字は兵を増やす命令にも、徴税の根拠にもならなかった。数字の後ろにいる者を確かめる仕事だけが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。