橋の下の薬草籠
東岸の医師テラが薬草の籠を受け取ったとき、底には川砂が詰まっていた。西岸の湿地で採る草だったが、荷を運んだ少年は渡しの途中で籠を水に落としたという。葉は濡れたままでは黒ずむ。使えるものを選び直すには手が足りなかった。
医療所には北の峠から来た負傷兵が五人いた。傷を縫ったあとの熱を抑える草が必要だった。テラは橋の市場で働く少女たちに、傷んだ葉と丈夫な茎を分ける仕事を頼んだ。手当ての経験がない子も、色と匂いなら覚えられる。
西岸の伝令ハルヴァンが見舞いに来た。東側で療養する娘の熱は引いたが、まだ橋を渡して帰せない。彼は籠の泥を見て、自分が西の採集地を案内すると申し出た。
「剣は要りませんか」テラが尋ねると、彼は首を横に振った。「採る人の足を守る靴が要ります」
その午後、二人の採集人は水際で転んだ。湿地の木道が朽ちていたのだ。採集は中断となり、代わりに木道の修理へ人が向かった。医療所は一時的に乾燥薬草の使用量を半分にした。
テラは患者の名前の横へ、薬を使えた日と使えなかった日を別々に記した。薬が届くと伝えるだけでは、次の治療を決められない。
医療所の倉では、薬草を吊るす縄も足りなくなっていた。テラは清潔な棚を患者の寝台から遠ざけ、火を焚く場所と分けた。少年は自分の失敗で草が失われたと思い込んでいたが、古い木道の傷みは何年も前から知られていたという。採集を急がせた大人の判断にも責任があった。テラは少年に次の採集場所を描いてもらい、危険な板を赤く塗って記録した。
夜、娘を見舞ったハルヴァンは、眠る子の手の温かさを確かめた。橋の通行規則より小さな命が、まだ両岸の決断を待っていた。




