七つの石
上流の堰に集まったのは、西岸の石工と農夫、東岸の調査隊、それに双方の護衛兵だった。崩れた土台から外れた巨石が流路を塞ぎ、水は北の谷へ逃げている。戦場に近いというだけで、現場は長く放置されていた。
石工の親方ベルクは膝まで水へ入った。
「こいつを元通りにするのは二十日じゃ済まん。まず底を見せろ」
東岸の副官が護衛を前へ出したとき、ベルクは振り返りもせず大声で言った。
「剣を見せ合う暇があるなら、石をどけてくれ。川はどちらの旗も読まん」
年長の西岸兵が盾を地面に置いた。東岸の兵も指示を受けて同じようにした。互いの顔を覚えるほど近くで働くのは、初めてのことだった。
昼、ミラが水路の先端を見て、積み直す場所が違うと告げた。春の増水では北側の石から削られる。ベルクは彼女の帳面を読み、父親が残した水位記録を一枚ずつ確かめた。
「そこまで見ていたなら、俺たちより川を知っているな」
若い石工がからかうと、ミラは首を横に振った。
「父が知っていたんです。私はまだ、間違えることばかりで」
日暮れまでに運べた石は七つ。流れは目に見えて増えず、農夫たちには失望もあった。それでも石を置く場所が初めて定まり、翌日の作業順ができた。
昼食時、双方の兵は別々の場所に座った。麦の焼き方も塩加減も違い、同じ鍋から食べようと提案する者はいなかった。それでも使った縄だけは一本の束へ戻された。作業に必要な道具は持ち主を争うより、どこにあるか分かるほうが大切だった。
夜には両軍の司令部へ、敵兵が上流に集結したという斥候の報告が届いた。川辺で働いた者たちは、そこに何人の石工がいたかを誰も聞かれていなかった。




