剣の作り手
東岸の鍛冶場では、剣の修理が遅れていた。鉄は古い建物から回収するしかなく、質の良いものほど数が少ない。親方のリゼルは、刃を長くする注文より折れた剣を使えるようにする仕事を優先していた。
若い兵が新品の剣を求めて来た。前線で配られた刃が欠け、上官から替えを持ってこいと言われたという。
「まだ研げる。新しい鉄を使うほどじゃない」
親方は刃の縁を指で確かめた。兵は不満そうだったが、修理を待つ間に鍛冶場の奥で働く人々を見た。金具を伸ばす者、革を縫う者、冷えた水を運ぶ者。
「ここは兵のためだけに剣を作るんですか」
「誰かが剣を持って来るから直す。それだけだ」
リゼルの父は、昔は鉄で橋の部品を作ったという。今はそれだけの材料を揃えられない。世界が壊れてから、鍛冶の仕事も小さくなった。
夕方、修理された剣が戻った。刃は少し短くなっていたが、手に持つと重心が安定していた。兵は礼を言って去った。
親方は次の仕事へ向かった。今度は堤防の水門に使う金具の修理だった。剣と水門の金具はどちらも同じ炉で温められる。
親方の弟子は、古い鉄骨から切り出した材料に小さな欠陥を見つけた。見た目は丈夫でも、中に錆が進んでいる。剣に使えば力を受けたとき折れるかもしれない。リゼルは使えない部分を分け、火箸の修理へ回した。良い鉄が少ないからこそ、何にでも使うわけにはいかない。炉の端には刃になる鉄、水門になる鉄、日用品へ戻る鉄が別々に並べられていた。
古い火床の横では、修理を待つ水桶も順番を待っていた。
鉄が少ない世界では、何を守るために使うかを決めることも、鍛冶場の仕事だった。




