数字の違う冬
赤環市からグラウゼンへ、塩の価格に関する返書が届いた。市は減税によって輸送量が回復すると見込んでいたが、北の評議員アーネが計算すると、期待される量には届かなかった。
理由は簡単だった。赤環市は出荷した袋の数を数え、北方は無事に届いた袋の数を数えていた。途中で壊れた樽や、道に足止めされた荷が数字から抜けている。
アーネはセリアに手紙を書き、次の商隊へ記録係を同行させるよう頼んだ。兵が必要かどうかは現地で判断してよい。ただしどこでどれだけ失われたかを知りたいと記した。
ナゼルは記録係を荷車に乗せることを了承した。余計な人が増えるのは面倒だったが、道の苦労を数えてくれる者がいるのは悪くない。
記録係は最初の日、荷札の字を読み間違え、ナゼルに何度も訂正された。翌日は道のぬかるみに靴を取られ、荷車を押すことになった。
「帳面は軽いだろう」
ナゼルがからかうと、記録係は泥の付いた手で笑った。
道が一つ崩れれば、何袋もの塩が市場に届かない。税を減らすだけでは済まない事情が、数字とともに書き込まれていった。
記録係は途中の村で、荷を量る秤が赤環市と違うことにも気づいた。商人たちは同じ一袋と呼んでいても、少しずつ重さが異なる。帳面へ書く単位を揃えなければ、途中で減った量を正確に確かめられない。ナゼルは樽を空にして一度量り、木の重さを記録した。数字の食い違いの一部は盗みではなく、道具の違いから生まれていた。
雨の日の損失も別の欄へ書き分けるようになった。
北の評議会では、その帳面を使って道路職人の数を増やす案が議論され始めた。




