盾を下ろす理由
エドランの副官は、橋の守備隊から兵を減らす案を持ってきた。水路の修理が進み、交易の通行も始まった。兵を畑へ戻せば、次の収穫を増やせるという。
エドランはすぐには賛成しなかった。西岸の司令部がいつ別の命令を受けるか分からない。峠では実際に戦闘が起き、多くの民が故郷を離れている。
「全部は減らせん。だが何人かは戻そう」
彼は部下の中から農業経験のある者を募った。志願した兵は二十七人。盾を手放すことを恥だと思う者もいれば、父の畑を守れると喜ぶ者もいた。
一人の兵が質問した。
「戻った者は臆病者と呼ばれませんか」
エドランは答えた。
「冬に麦を作る者がいなければ、ここに残る兵も立てない」
最初の二十七人は翌朝、橋から離れた。代わりに見張りの時刻を調整し、夜の巡察を短くした。守備隊の負担は増えたが、村から届く食料が保たれれば取り戻せるものもある。
夕方、戻った兵の一人が鍬を手に取った。何年も握っていなかった木の柄は、剣とは違う場所に豆を作った。
畑へ戻った兵の家では、父親が迎えに出た。久しぶりの息子は制服のまま立っていたが、父はまず足の泥を見て、長靴が合っていないと気づいた。家に残していた古い靴を出し、畑ならこちらのほうが歩きやすいと言った。息子は盾を壁へ立て、履き替えた靴で外へ出た。鍬は重かったが、誰かを傷つけるために振る必要はなかった。
家族は食卓に席を一つ増やし、夕餉の量を静かに分け直した。
橋の鉄骨には、今日も両軍の旗が影を落としていた。盾を下ろした者がいる一方で、盾を握り直す者もいる。その数の差は、すぐには戦況として現れなかった。




