水が戻る日
堰の修理を始めてから、ようやく南の水路へ十分な水が流れた。ベルクは石の継ぎ目を確かめ、ミラに流量を測らせた。帳面の数字は去年の秋には届かないが、種を蒔くには希望がある。
農夫たちは歓声を上げなかった。流れが戻っても、畑の土が乾ききった場所では芽が出ないかもしれない。村ごとに水を分ける順序を決めなければ、上流の者だけが豊かになる。
ミラは地図に水路の枝を描き、流量の変化を書き込んだ。会議には東岸と西岸の農夫が集まった。誰も国家の代表ではない。自分の畑の位置を知っている者たちだった。
「朝は北の村、午後は南へ流す」
ベルクの案に、南の老女が反対した。昼の熱で水が減るからだ。議論は続き、最終的に日ごとに順番を入れ替えることになった。
西岸の兵は水門を閉めよという旧命令が正式に取り消されたと知り、詰所の紙を剥がした。そこに残る釘穴はすぐには消えない。
夕方、ミラは父の帳面を開き、新しい水位を最初の頁に書き添えた。父が亡くなってから何年も、彼女は数字が減るのを見続けてきた。
水門の配分を決めたあと、ミラは下流の農家を一軒ずつ訪ねた。水が届いているか、夜に漏れがないかを確かめるためだ。ある家では畑に泥が溜まり、別の家では水路の分岐が埋まっていた。堰だけが直っても、細い支流が詰まれば水は届かない。彼女はその違いを帳面へ加え、次に必要な作業を小さな順で並べた。父の地図にもなかった新しい溝が一つ生まれていた。
今度は少し増えた。そのことを喜んでいいのか迷ったあと、ミラは川辺で靴を脱ぎ、水に足を入れた。冷たさが足首まで届いた。




