峠のあとに
峠の戦闘から日が過ぎ、ラウゼの避難民は南の谷に仮住まいを作った。故郷へ戻りたい人と、戻るのが怖い人が同じ広場に暮らしている。イザクは兵を集めて復讐を誓わせることをしなかった。
彼がまず確認したのは、家族の行方と残った食料だった。戦で亡くなった兵の名は公に読み上げ、行方不明の者は別の表に残した。死を急いで確定すれば、帰ってくる者の場所まで奪ってしまう。
ラギアは負傷した部下を訪ね、片腕が以前のように動かないと聞いた。若い兵はもう盾を持てないかもしれないと嘆いた。彼女は慰めの言葉を探さず、仕事を続けるか故郷の家族を探すか、本人に選ばせた。
兵はしばらく考え、避難民の荷の数を記録する仕事を選んだ。読み書きは得意ではなかったが、隣の老人が文字を教えると言ってくれた。
一方、峠を占めるミシュラ軍は、南への前進を止めて道の補修を始めていた。両軍とも勝利の報告や敗北の説明に追われ、現地で暮らす人々の都合は十分に伝わっていない。
夜、ラウゼの広場では小さな灯が並んだ。兵の墓はまだ作れていない。村人たちは失った者の名前を木片に書き、灯のそばに置いた。
負傷兵の老人教師は、文字を教える最初の日に、食料を数えるための数字から始めた。兵は片手しか自由に動かせず、筆を持つにも時間がかかる。教師は左手で書く方法を試し、指の間に布を巻いて筆を支えた。夕方には自分の名前をどうにか一行書けた。ラギアはその文字を見て、戦場から戻った後にも人は別の技を覚えられるのだと知った。
イザクはその列に自分の部下の名を見つけ、木片が雨に濡れないよう屋根の内へ移した。帰る道は塞がれたままだった。




