飢えた兵舎
西岸の南部兵舎で、配給をめぐる口論が起きた。前線へ行かない修理兵に同じ量を配るのは不公平だと、若い盾兵が言い出したのだ。厨房長オミルは鍋を置き、彼らに修理場を見せることにした。
修理兵たちは割れた盾の金具を直し、古い剣の刃を研いでいた。仕事は重く、寒い工房では手を切る者もいる。夜まで修理を続けなければ、前線で持つ盾が足りない。
「剣を振らない者が楽をしているわけじゃない」
工房長はそう言った。若い兵は納得できない顔をしたが、革を引っ張る仕事を試すと、数分で掌に豆ができた。
オミルは配給の量を変えなかった。代わりに兵舎の食堂へ工房の修理予定を掲示し、兵が盾を預けるときに何日かかるか分かるようにした。
その夜、兵の一人が修理兵に謝った。しかし別の兵は、前線の危険を分かっていないと言い続けた。二つの仕事を比べることに答えは出ない。
翌朝、傷んだ盾が十枚、修理場から戻った。若い盾兵はその一枚を受け取り、縫い直された革を指で確かめた。
工房長は修理に出された盾の内側へ、預けた兵の名を小さく記すことを始めた。似た傷が多く、返すときに取り違えが起きていたからだ。古参兵は自分の盾を知らない者などいないと笑ったが、新兵は安心した。祖父の盾を借りている者も、初めて支給された盾を持つ者もいる。修理場では名を確かめてから金具を外し、違う兵の腕に合わないよう気をつけた。
盾の裏には、小さな刻みが新しく増えていた。修理した職人の印だと知り、彼はその形を覚えた。戦列に立つとき、見えない場所に誰かの仕事が残ることを、初めて意識した。




