残した石段
峠の石段を守った小隊には、十四人の兵がいた。隊長は二十九歳の女性ラギア。彼女は敵の軍旗ではなく、背後の細い避難路を見ていた。そこを通る最後の荷車が森へ入るまで、後ろへ下がれない。
敵軍は石段を登り、盾の壁を作った。ラギアは一段ごとに兵を退かせ、戦列の幅を保った。剣が振られるたび腕に衝撃が走り、盾の縁が欠けていく。敵も何度も立て直し、急いで上りきろうとはしなかった。
途中、若い兵が足を負傷して倒れた。隣の兵が助けようとしたが、前列が薄くなる。ラギアは自分の盾で隙間を塞ぎ、二人に負傷者を下ろさせた。全員を連れ帰ると誓う余裕はなかった。それでも見捨てずに済む瞬間があるなら、ためらいたくなかった。
日が傾く頃、森の方角で三度、鐘が鳴った。村長が決めた合図だ。最後の荷車が森を抜けたのだと分かった。
「退くぞ」
兵たちは一人ずつ段を下り、後方の狭道へ入った。追う敵は坂を急げず、何人かはその場に残って倒れた仲間を担いだ。
森に出るまでに、小隊は二人を失った。ラギアは全員の名を口にして数え、答えのない名を二つ胸へしまった。
ラギアは戦いの最中、敵兵の顔を一人だけ覚えていた。盾の下から覗いた若い目は、怯えを隠そうとしていた。あの兵も命令を受けて坂を登っているのだろう。そう理解しても、剣を納めることはできなかった。石段を守る者と登る者の間にある距離は、数歩しかない。だがその数歩に立つ限り、互いが相手を退かせなければならなかった。
夜、避難民の焚火のそばに戻ると、誰かが彼女に温かい豆を差し出した。ラギアは最初の一匙を、手の震えが止まるまで持ち上げられなかった。




