↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四次世界大戦――剣と盾しか残らなかった世界で  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/156

盾の傷

西岸の伝令ハルヴァンの盾には、三代分の傷があった。縁は何度も張り替えられ、中央の鉄板には祖父の名が薄く残っている。彼は夕方になると、裂けた革の留め具を少しずつ縫い直した。

司令官ヴァルドが天幕を訪れ、東岸での返事を尋ねた。

「三日待てと。村に相談するそうです」

「敵の軍なのに民に伺いを立てるか」

「倉の麦は村々のものだと」

ヴァルドはそれ以上笑わなかった。西岸では軍が配給を決めている。戦いを止めれば奪われると考える将校も多い。兵が畑を離れたため、守る食料そのものが減っていた。

「期限が過ぎたら動けるようにしておけ。ただし俺の命令までは橋に入るな」

ハルヴァンは頷いた。命令が二つに分かれていることを、彼はありがたく思った。

家族の天幕へ戻ると、長女が干しパンを半分差し出した。熱を出した妹は毛布の奥で眠り、妻は傷んだ靴底を縫っている。

「お父さん、向こうにも子どもはいる?」

「いるよ。橋の近くで見た」

「その子もお腹すくの?」

「ああ」

娘は残りのパンを見つめたが、何も言わず自分の口へ運んだ。ハルヴァンはそれを止めなかった。家族の食料を他人に分ける約束など、幼い子に背負わせるべきではない。

妻は盾の修理跡を見つけると、縫い目を一箇所ほどき、丈夫な糸で結び直した。ハルヴァンは自分の手際を笑われた気がしたが、妻は笑っていなかった。「家に帰ってくるためのものだから」と言い、傷んだ部分をもう一度確かめていた。

夜、彼は再び盾を手に取り、修理の終わった革を引っ張った。破れた箇所は塞がっても、古い傷までは消えない。外では避難民の列に新たな荷車が加わり、配給係がその人数を数え直していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。