盾の傷
西岸の伝令ハルヴァンの盾には、三代分の傷があった。縁は何度も張り替えられ、中央の鉄板には祖父の名が薄く残っている。彼は夕方になると、裂けた革の留め具を少しずつ縫い直した。
司令官ヴァルドが天幕を訪れ、東岸での返事を尋ねた。
「三日待てと。村に相談するそうです」
「敵の軍なのに民に伺いを立てるか」
「倉の麦は村々のものだと」
ヴァルドはそれ以上笑わなかった。西岸では軍が配給を決めている。戦いを止めれば奪われると考える将校も多い。兵が畑を離れたため、守る食料そのものが減っていた。
「期限が過ぎたら動けるようにしておけ。ただし俺の命令までは橋に入るな」
ハルヴァンは頷いた。命令が二つに分かれていることを、彼はありがたく思った。
家族の天幕へ戻ると、長女が干しパンを半分差し出した。熱を出した妹は毛布の奥で眠り、妻は傷んだ靴底を縫っている。
「お父さん、向こうにも子どもはいる?」
「いるよ。橋の近くで見た」
「その子もお腹すくの?」
「ああ」
娘は残りのパンを見つめたが、何も言わず自分の口へ運んだ。ハルヴァンはそれを止めなかった。家族の食料を他人に分ける約束など、幼い子に背負わせるべきではない。
妻は盾の修理跡を見つけると、縫い目を一箇所ほどき、丈夫な糸で結び直した。ハルヴァンは自分の手際を笑われた気がしたが、妻は笑っていなかった。「家に帰ってくるためのものだから」と言い、傷んだ部分をもう一度確かめていた。
夜、彼は再び盾を手に取り、修理の終わった革を引っ張った。破れた箇所は塞がっても、古い傷までは消えない。外では避難民の列に新たな荷車が加わり、配給係がその人数を数え直していた。




