剣のない夕食
西岸司令部では兵の献立が変わった。麦を減らして豆を増やす。古い豆は煮るのに時間がかかり、料理係たちは薪の配分をめぐって頭を抱えた。
厨房長のオミルは、兵糧官マルテに炉をもう一基使いたいと願い出た。しかし城内の薪は医療所にも必要だ。二人は鍋の大きさと豆の量を測り、火を弱く保つ方法を試した。
「戦の会議より難しいな」
マルテが苦笑すると、オミルは顔をしかめた。
「会議で腹が膨れるなら、私も楽ですよ」
翌日の夕食は少し遅れた。列に並んだ兵の中には不平を言う者もいたが、最後の鍋まで温かい豆が配られた。
フィンは隣に座る古参兵から、昔の戦場では食べる時間が決まっていなかったと聞いた。指揮官が攻めると言えば夜中でも走り、腹を満たす前に剣を握ったという。
「今はましなんですか」
「何を比べるかによるな」
古参兵は豆を一口食べ、それ以上語らなかった。
厨房の外では、ハルヴァンが娘から届いた手紙を読んでいた。熱が下がり、東岸の学校に通えるかもしれないと書いてある。彼は小さく笑い、手紙を折って胸へしまった。
厨房では余った豆の煮汁を捨てず、翌朝の薄い汁物に使うようになった。味はよくないが、温かいものが腹へ入るだけで夜番の兵は助かる。オミルは大鍋の底を磨く時間まで予定に入れた。衛生を怠れば、節約した食料が病人を増やす。兵たちが食事を終えたあとも、厨房の灯はしばらく消えなかった。
夜番から戻った兵は、椀の底まで丁寧に飲み干した。
その夕食に戦闘はなかった。しかし誰がどれだけ食べたか、料理係はすべて記録した。冬になれば小さな違いが命に変わることを、厨房はよく知っていた。




