隠された二袋
東岸の病院に運ばれる麦が二袋、途中で消えた。護衛は何も見ていないと言い、荷を積んだ農夫は倉の数え間違いだと主張した。サラは最初から盗みと決めつけず、出荷した袋の縫い目を記録で確かめた。
袋には村ごとの印があった。消えた二袋は山村の印で、荷車が坂を登ったとき積み直されたらしい。サラはその場所へ歩いて行き、草に付いた麦の粒を見つけた。
近くの納屋には、避難民の一家がいた。母親は子どもを背にかばい、二袋を隠したことを認めた。
「病院から奪ったつもりじゃない。うちの子も三日、粥だけだった」
サラはその場で兵を呼ばなかった。二袋の半分はまだ手つかずで、返してもらうことはできる。だが一家を飢えたまま追い出せば、また誰かの荷が消える。
彼女は村長と医療所に相談し、母親を倉の選別作業へ加えた。報酬は麦で支払う。消えた分は記録に残し、病院には残りの一袋を先に届けた。
「甘すぎる」
助手が言った。サラはそれを否定しなかった。
「病院の分を隠したことは、なかったことにできない。でも子どもを飢えさせるのも、正しい帳尻とは思えない」
母親が最初の日に選んだ麦は、傷んだ粒が多かった。手際を知らないからではない。急いで仕事を終えれば早く食料を受け取れると思ったためだった。サラは選別の理由を教え、急がなくても報酬は減らさないと伝えた。二日目には母親の手が落ち着いた。食べ物を手に入れる機会を守ることと、仕事の正確さを守ることは、同じ場所で両立できた。
数日後、母親は選別台へ一番に来た。手を洗って麦を広げる姿を見て、周りの女たちは作業の手順だけを教えた。誰もすぐに友達になろうとはしなかった。




