押される盾
西岸の外れで、巡察隊同士が衝突した。狭い畑道で東岸の五人と西岸の六人が出会い、互いに引けと命じた。どちらの地図でもそこは自軍の巡察路だった。
最初に盾を押したのが誰か、あとになっても一致しなかった。泥で足を滑らせた兵が倒れ、その上へ別の盾が重なる。剣が抜かれ、短い間に二人が傷を負った。
東岸の隊長エリンは、部下が相手を深追いしようとするのを止めた。西岸も負傷した兵を抱えて後退した。畑に残ったのは踏み潰された苗と、落ちた盾の留め具だった。
エリンは負傷者を連れて村へ戻った。医師は傷を縫いながら、なぜそこにいたのかと尋ねた。
「道を見張っていただけです」
「向こうもそう言うだろうね」
夕方、西岸のルド隊にも知らせが届いた。負傷した者の一人は彼の部下だった。ルドは怒りを抑え、衝突した場所を歩いて確かめた。目印の石が農作業の邪魔で移され、古い水路の跡と混同されていた。
「石一つで、二人が斬られたのか」
部下が呟く。ルドはうなずかなかった。石だけのせいにすれば、剣を抜いた者の責任が見えなくなる。
二つの司令部へ報告が届くまで、畑の老人は誰にも責任を問えずにいた。苗が折れた場所へ目印を立て、子どもたちに踏まないよう頼んだ。巡察隊が通るたび農作業をやめなくて済むよう、別の道も整えた。軍の境界は紙の上で揺れるが、麦はそこで育つしかない。老人は来春に収穫が落ちる分を記し、領主へ補償を求める手紙を書かせた。
夜、両隊の報告は別々の司令部へ運ばれた。最初に攻めたのは相手だと、それぞれに書かれていた。ただ、負傷者の数だけは一致していた。




