北の雪解け道
北方の道路職人たちは、雪より先に崩れた路肩を直そうとしていた。山道に塩を運ぶには、荷車が通れる幅が必要だ。セリアの兵は護衛に立ち、石を運ぶのは職人と雇われた地元の人々だった。
工事の途中、古い地下道が見つかった。入口は土で埋まり、壁には第三次大戦以前の文字が残る。若い兵が近道になると喜んだが、職人長は首を振った。
「天井の強さを知らん。荷を通す前に調べる」
調査には数日かかった。中へ入ると空気は湿り、足元には壊れた車両の骨組みがあった。世界が高速で移動していた頃の名残だ。誰もそれを動かすことはできない。
職人長は石の割れを確かめ、半分の区間だけは安全だと判断した。ただし出口が崩れているため、そのままでは街道に繋がらない。
セリアは近道を作る提案を断らなかったが、冬前の完成も約束しなかった。まず地上の道を一台分通せるようにする。地下道は次の季節の仕事とした。
副官は軍なら短時間で工事を進められると言った。
「剣を持つ者が土台を知らずに掘れば、作った道ごと死ぬ」
セリアはそう答え、地上の荷車を押す人手を増やした。
工事の朝には地元のパン焼きが小さな包みを届けた。作業者の誰かが腹を空かせて倒れれば、道はそれだけ遅れる。職人長は受け取ったパンを人数で分け、後から来た人のため二つ残した。地下道の入口には不用意に入らないよう柵を立てた。好奇心を持つ子どもが壊れた車両を見に来ても、崩れる天井の下へは近づけないためだった。
やがて最初の一台が崖の区間を越えた。樽は空だったが、車輪の音を聞いた村の子どもたちが家から出てきた。道が直ったと知るには、その音だけで十分だった。




