赤い印の商人
塩商人のナゼルは、赤環市の外門で新しい通行札を受け取った。税が半分になったと聞いて戻ってきたのだが、内門では別の札を買うよう命じられた。二枚を合わせれば、以前と大差ない。
「参事会は減税したはずだ」
門番は首をすくめた。
「こちらは道路警備費だ。別の決まりになってる」
ナゼルは怒鳴らず、札を二枚並べて帳面に値を記した。北で塩が不足していることは知っている。しかし利益が出なければ次の荷を積めない。彼は荷車の半分だけを買い、残りの樽を空のままにした。
道中、小さな宿場で子どもたちが塩を求めてきた。ナゼルは少しずつ分けたが、全部を渡さなかった。北に待つ客との約束もあるからだ。
宿の主人が古い街道図を見せた。遠回りすれば赤環市の内門を通らず済むが、道には崩れた橋があるという。
「荷車が落ちたら、いくら安い道でも高くつく」
ナゼルは元の道を選んだ。その晩、宿帳には通行札に払った金額を正確に書き残した。次に来る商人が判断する材料にしてほしかった。
ナゼルの荷車には、車輪を替えた日と修理に払った費用も記されている。若い荷運びはその細かさを笑ったが、遠い道で車輪が壊れれば、塩を売っても損になる。ナゼルは軸の傷を見せ、次に替える時期を説明した。商売は値札の数字だけで決まらない。車輪に付いた泥を落としながら、二人は休憩する宿場をもう一つ増やすことにした。
数日後、その宿帳の写しがグラウゼンへ届いた。評議員アーネは数字を読んで、南へ使者を出す議案を準備した。軍が道を開くだけでは塩が安くならないことを、初めて他の評議員たちに示せた。




