封じた倉庫
西岸の兵糧官マルテは、倉の奥で麦袋が湿っているのに気づいた。屋根の継ぎ目から雨が入り、袋の下には小さな水溜まりができていた。備蓄表では冬まで保つはずの食料だった。
彼はまず袋を開け、傷んだ麦を別の箱へ移した。部下は上官へ報告する前に捨てたほうがいいと進言した。失敗を知らせれば配給の責任を問われるからだ。
「隠しても腹は満たせん」
マルテは翌朝の会議で減少量を報告した。将校たちは兵の配給を削る案、近隣の村から買い上げる案、橋の向こうの倉を奪う案をそれぞれ口にした。
ヴァルドは三つともすぐには採らなかった。村から麦を集めれば春の種が減る。橋を攻めれば、避難民と兵の区別もつかない。配給を急に減らせば、弱っている者から倒れる。
「屋根を直せ。傷んでいない袋を先に移せ」
兵糧官はその当たり前の命令を聞き、初めて肩の力を抜いた。建物を守る仕事に兵を割くのを嫌う将校もいたが、雨漏りは敵の剣より静かに麦を失わせる。
数日後、倉の上に新しい板が載った。腐った麦は戻らない。マルテは減った量を帳面から消さず、修理に使った材木も記録した。
屋根を直す大工は、古い煉瓦の壁に前の修理痕を見つけた。以前も同じ場所から水が入っていたのだ。マルテは担当者の名を責める代わりに、どうして継ぎ目が開くのか聞いた。壁が冬に縮むという答えを受け、木の板の置き方を改めた。次の雨まで本当に防げたかは分からない。倉を守る仕事は、一度釘を打って終わるものではなかった。
夜、見張りの兵が倉の匂いを確かめに来た。以前の黴臭さは薄れていた。マルテはそれを報告に書く代わりに、明朝もう一度袋を開けることにした。




