↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四次世界大戦――剣と盾しか残らなかった世界で  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/192

敵の名前

西岸軍の訓練場では、新兵が剣を振っていた。木で作った練習用の刃でも重く、盾を持つ腕がすぐ下がる。教官のギルは腕力より、隣の者と歩幅を合わせる練習を長く続けさせた。

新兵の一人、フィンは東岸から逃れてきた若者だった。父の村は戦線が動いたとき両軍に食料を出し、最後にはどちらの領主にも見捨てられた。

「敵はどちらですか」

訓練の休憩中、彼は教官に尋ねた。

「こちらへ剣を向ける者だ」

「では、先月まで一緒に住んだ隣人も?」

ギルはすぐに答えなかった。自分も若い頃、前線が移った日に昨日の味方を敵として教えられた経験がある。

「軍の印は変わる。そこだけで人を判断するな。だが、戦列で迷えば隣の者が死ぬ」

フィンは盾の取っ手を握り直した。答えは曖昧なままだが、曖昧でなくてはならないこともあると知った。

夕方、訓練場の外に避難民の荷車が到着した。ハルヴァンの娘と同じ年頃の子が、道端で落とした靴を探している。フィンは訓練を終えると一緒に探した。

見つかった靴は片方だけだった。彼は自分の予備の布を渡し、もう一方の足を包むよう教えた。剣の稽古で擦れた手には布の結び目が痛かった。

教官は夜、訓練用の木剣を一つずつ点検した。刃の先が割れていると、稽古で人を傷つける。実戦の剣のほうが重くても、初めて剣を持つ若者には木の欠片が怖いこともある。ギルは折れかけた一本を外し、翌日に交換するよう札を付けた。

家族の名を呼ぶときと、点呼の返事では声の響きが違った。

夜の点呼で、フィンははっきり返事をした。所属する軍は決まった。しかし心の中で呼ぶ敵の名は、まだどこにも書けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。