門の兵士たち
セリアがたどり着いた関所には、旗が二枚揚がっていた。一枚は西岸ヴェルク軍の古い紋章、もう一枚は色の落ちた無地の布だ。守る兵士たちは年齢も訛りもばらばらで、盾の形さえ揃っていなかった。
関所長はトーマと名乗った。故郷を失った集落の者が自分たちで門を守り、通行料を集めて食いつないでいるという。いまでは東岸から逃れた一家も、西岸の脱走兵も同じ壁の内側に暮らしていた。
「南の商隊を止めている理由は」
セリアが聞くと、トーマは門の蝶番を示した。
「車が通るたび落ちそうだ。壊れたら誰も直してくれない」
通行料は木材と石を買うために使うのだという。セリアは修理帳を見せてもらった。数字は粗末だったが、嘘を重ねた形跡は薄い。
彼女は関所の補強に職人を出す代わりに、塩を積んだ荷車を一定数通す約束を求めた。トーマは門の外に集まる家族へ相談すると言った。
「軍の長なのに、皆に聞くのか」
副官が小声で尋ねた。
「ここでは彼が、誰かを一人で追い出せるわけではないのだろう」
翌朝、関所の人々は条件付きで提案を受け入れた。連合の兵が関所に駐屯しないこと、通行する商人が飲み水を買えることが加えられた。
トーマの妻は関所の裏で小さな菜園を育てていた。兵の数が増えれば水の配分を変えなくてはならない。彼女はセリアの職人に、門だけでなく井戸の滑車も見てほしいと頼んだ。職人は壊れた綱を交換し、その日のうちに水桶を引けるようにした。
灰色の盾は門の外で待ち、道路職人だけが内へ入った。空になった塩樽が並ぶ広場では、修理のための材木が初めて数えられた。




