折れない秤
南の海辺、赤環市の塩田では白い結晶がまだ採れていた。赤い円の旗を掲げる市参事会は、海水を煮る薪と荷車を守るため、通行税を二重にしたと説明していた。
徴税官フェルマは、商人が怒って去るのを見るたび帳簿に印を付けた。徴収額は増えたが、通る車の数が減り、塩の出荷総量は下がっていた。城壁の中では収入が上がったように見え、外では冬の備えが痩せていく。
彼女は参事会へ数字を持っていった。
「次の月には、税を払う商隊そのものが来なくなります」
議員の一人が首を振る。
「剣を持つ者に払う兵糧が要る」
「なら、売れる塩を増やす必要があります」
武装していない職人と商人の前で交わされた議論は、夜まで続いた。市の剣士は訓練場を守り、塩田には兵を置く。それを維持するために上げた税が、維持するための収入を減らしていた。
フェルマは帰り道、閉じた宿屋の前で塩商人の老人と会った。老人は北へ向かう荷をやめ、家族のために塩を少し買って帰るところだった。
「街道が安全なら、また来ますよ」
「税が減れば来ますか」
「道で別の軍に取られるなら、同じことです」
翌朝、参事会は一度目の通行税を半分にした。ただし二つ目の門の徴収は続けた。フェルマは改定表を書き直し、これではまだ戻らない商人が多いと見込んだ。
塩田の端には、海水の深さを測る杭が並んでいた。フェルマは帳簿より先にそれを見る日もある。雨が続けば結晶が育たず、風が強ければ人足が作業できない。市の兵がどれほど増えても、海と天気を命令で動かすことはできなかった。
遠い北のグラウゼンで塩がどれほど足りないか、市議たちは正確には知らなかった。




