南から来た鉄商人
北方と東岸の間の街道へ、見慣れない紋章を付けた鉄商人が現れた。南方の同盟市から来たという。運んだのは鉄の棒と完成した盾で、どちらも高値だった。商人は代金に麦ではなく、橋の通行権を求めた。
エドランは取引を断る前に商人の証文を確かめた。南方の同盟市は現在、近隣の六領主へ鉄を売っている。誰と敵対しているかを問うと、商人は商売と戦争は別だと言った。
マーヤは鉄の質を試し、曲げると細い亀裂が入る棒が混じっていることを見つけた。商人はそれでも使えると主張したが、盾の縁に付ければ衝撃で折れる。職人は良い棒と悪い棒を分け、価格も分けた。
商人は夜の宿で、軍の高官が買ってくれるだろうと漏らした。宿の主人はその言葉を市場係メレンへ伝えた。翌朝、メレンは商人に税を払わせるだけでなく、どこへ売ったかを明らかにする札を求めた。
商人は不満を示し、荷車の一台を引き返させた。失われた鉄は惜しいが、どこで使われるか知らないまま橋を開くのも危うい。
商人の車には、商売の前に別の村で頼まれた修理道具も積まれていた。通行権が出なければ道具を届けられないと分かり、商人は必要な品だけ預けて引き返した。メレンは受取人の名を確かめ、兵の金具と混ざらぬよう倉を分けた。荷の持ち主が違えば、車の紋章だけで敵味方を判断できない。鍛冶場の徒弟は渡された小槌を、持ち主の手へ返すまで磨かなかった。
車輪に残った泥は、この街道にはない色だった。
エドランは残った荷を受け取り、代金の一部を現物の麦で支払った。商人は他国へ向かう道を尋ねた。売る場所が一つ閉じても、買う者は戦争の続く限り現れる。




