煙の見える村
鉄を焼く炉の煙が増え、東岸の山村では洗った布が黒く汚れるようになった。村人は鍛冶場を遠くへ移せと訴えたが、風の弱い谷には十分な水がない。炉を止めれば盾の修理も橋の補修も遅れる。
村の教師は、子どもの咳が増えた日と煙の向きを記録していた。風向きだけでは病気の原因は分からない。それでも鍛冶場の裏にある薪置き場から、濡れた木を燃やす煙が濃く出ていることは確かめられた。
マーヤは薪を変えた。乾いた木を使うため村の共同倉を借り、代わりに炉の余熱で洗濯物を乾かせる小屋を作ると約束した。村人の中には、そんな取引では空が戻らないと言う者もいた。
若い徒弟は炉を離れ、教師と一緒に山へ入った。薪を採る木の選び方を教わるためだ。根を残して伐れば次に生える。知らずに山を裸にすれば、雨が谷へ土を運び、炉の水路も埋まる。
帰路、二人は新しい苗を守る柵を作った。村人は鍛冶場の人間が畑の端に来ることを警戒したが、教師の紹介で手を貸した。
炉の排水を受ける小川で、魚が一匹腹を見せて浮いていた。教師はすぐに鍛冶場が原因だと責めなかったが、念のため水を使う時間を分けようと提案した。マーヤは灰が流れないよう沈殿池を掘らせた。兵は釘を早く作れと催促したが、村の井戸が使えなくなれば作業をする者も残らない。小川の底へ溜まった灰は、毎朝すくい取ることになった。
雨の翌朝は、川底の泥も別にすくって比べた。
夜、煙が完全に消えたわけではない。マーヤは炉の火を弱める時間を決め、出来上がる釘の数を書き直した。兵から催促が来ても、空が黒くなる理由を説明できるようにした。




