刃より足りない釘
東岸の鍛冶場へ、領主から盾の縁金を増産せよという注文が届いた。同じ朝、橋脚の修理を担う石工が大きな釘を求めた。鍛冶頭のマーヤは炉の前で二つの木札を比べ、どちらにも足りないと告げた。
鉄の塊は残りわずか。北方から運ばれる予定の材料は雪道で止まり、古い道具を溶かして使うしかない。若い徒弟は農具を回収しようと言ったが、春を迎える畑から鍬を奪えば次の収穫が減る。
マーヤは兵舎へ行き、折れた盾の金具を集める許可を得た。再利用できるものを選び、傷んだ鉄だけを炉へ戻す。兵は新しい金具を求めたが、彼女は同じ形を作るためにも職人の時間が必要だと説明した。
橋の石工は古い釘の曲がりを見せた。この長さだけは短くできないという。マーヤは盾の縁金を二枚減らし、その分で釘を打った。どの盾の修理が遅れるか、兵舎に名を挙げて報告した。
その夜、徒弟は煤にまみれて指を冷やした。戦争がなければ鍛冶場は暇だろうと思っていたが、今は家の蝶番や井戸の金具まで直す依頼がある。剣だけが鉄を使うのではない。
工房の床には、金具を外した盾の木片が積まれた。徒弟は薪にしようとしたが、マーヤは傷の少ないものを選び、盾の持ち手を直す材へ回した。鉄が足りないからといって木が余っているわけではない。柄の幅を測るため、兵たちに手袋を外して握らせた。戦場で落とさない盾は、使う者の手の形から決まることもある。
炉の温度が下がると、鉄の赤さも鈍くなった。徒弟はその色を覚えた。
マーヤは冷えた釘を一列に並べた。橋が渡れなければ剣も麦も届かない。彼女は翌朝、最初の箱を石工へ持たせた。




