アスタレの灰色の子
北方の境界村へ、髪を灰に染めたような少年が一人たどり着いた。アスタレから逃げてきたという。年は十二、名はコラン。携えたのは薄い木椀だけで、国の印も家族の書面もない。
村の見張りは話を聞いたが、少年の言う道筋が地図と一致しなかった。峠は閉じられたと聞いていたのに、コランは通ってきたと言う。少年は道の名前を知らず、岩の形と枯れた木を覚えているだけだった。
北方の評議会は、大勢の避難民が続くことを恐れた。セリアへ調査を求めたが、南の塩街道を守る兵も足りない。彼女は軍ではなく二人の猟師と、少年の言葉を覚える教師を派遣した。
コランは食事を前にして木椀を離さなかった。村人が新しい椀を渡そうとしても、首を振った。それは母が作ったものだという。縁は欠け、握るところだけ黒く磨かれている。
教師は少年から聞いた地名を記したが、一つだけ同じ場所を何度も説明するのが気になった。そこには焼けた井戸と、倒れた鐘があった。少年にとって、村の名前より確かな目印だった。
少年の椀には、内側に二本の線が刻まれていた。母が兄弟の食事量を分けるために付けたものだという。教師は兄弟がいるのか尋ねたが、コランは顔を伏せた。翌日、彼は椀を洗う水を半分だけ使った。以前の村では井戸まで遠く、汲んだ水を無駄にできなかったと話した。北方の水桶は満ちていても、身体は故郷の節約を覚えていた。
夜、コランは納屋の隅で眠った。見張りは知らない道から別の軍が来るかもしれないと考えた。少年の通った道が本当に使えるなら、村は安全な奥地ではなくなる。誰も彼を責めず、門の補強だけが翌朝の仕事に加わった。




