橋から消えた荷札
旧鉄道橋の市場で、荷車の札がまとめてなくなった。麦と塩を分けるための木札で、失えばどの荷物が誰のものか分からなくなる。市場係メレンは門を閉じず、荷を動かさないようだけ伝えた。
最初に疑われたのは西岸の避難民だった。最近雇われた若者が札を集める仕事をしていたからだ。若者は名札を持っておらず、口頭で預かった仕事だった。東岸の商人は盗みだと訴えた。
メレンは荷の位置を調べ、札が外れた棚の下に薄い木屑があることへ気づいた。荷車の振動で釘が緩み、札ごと床板の隙間へ落ちていた。大半は見つかったが、三枚が見当たらない。
被害があった商人は、若者へ謝ることをためらった。疑った理由はあったと言う。メレンはその理由を帳簿に残してもよいが、無実が分かった後の仕事も必要だと伝えた。若者は夕方の札作りに加わった。
古い札には文字が多く、区別が難しかった。今度は荷物の種類を形で表すことにした。麦は四角、塩は丸、薬は細長い穴を開ける。作るのに時間はかかるが、落ちても誰の荷かを確かめやすい。
木札を切る職人は、印の形を増やしすぎると覚えられないと忠告した。メレンは品目を細かく分ける案を捨て、四つの種類に絞った。例外の荷は人が説明する。全てを印に押し込めれば、今度は印を扱える者だけが市場を通れる。少年たちは札の穴に糸を通し、棚から落ちない結び方を試した。
壊れた札をもう一度削る手つきは、午前より慎重だった。
市場の端で、西岸の子が新しい札を指で触った。字を覚える前にも仕事の意味が分かる。メレンは札を箱に入れ、夜のうちに失われた三枚の持ち主を探した。




