十九番目の人形
ハルノ島の孤児院に、ようやく布人形の箱が届いた。二十体のうち、青い服を着た一体だけ腕の縫い目が違う。子どもたちは箱を囲み、どれが自分のものになるのか指を伸ばした。
院長は年長の子から選ばせようとしたが、背の低い少女が先に青い人形へ手を伸ばした。長いあいだ港で待たされた贈り物に、順番を決める権利が誰にあるのか。院長は困り、子どもたちへ一体ずつ回して触らせた。
港から来た船員は、王国の役人が縫い直したものだと教えた。サルディアという名を聞き、男の子は「あの船を止めた国だ」と言った。船員は否定しなかったが、人形を縫った人と船を止めた人は別だと説明した。
午後、島長が孤児院を訪れた。海峡ではまた船が傷つき、春の交易は不安定になっている。子どもたちには港の仕事を押し付けず、学校を続けてほしいと院長は頼んだ。
夕方、十九番目に選ばれた子が人形を抱き、まだ箱に残る一体を見た。最後の子が病気で寝込んでいたので、明日渡すことにした。箱は空にせず、院長の部屋に置かれた。
箱を届けた船員は、人形と一緒に島の言葉で書かれた挨拶も渡した。院長は子どもたちへ読み上げ、送り主の名前を記録した。誰かは字を読めず、代わりに波の絵を描いていた。その絵を見た子は自分の故郷の海岸を思い出し、しばらく人形を持たずに窓の外を見ていた。院長は急がせなかった。
夜、青い服の人形を選んだ少女は、その腕の継ぎ目をなぞった。知らない港で誰かが針を持ち、送り先の顔も知らずに縫った痕だった。海峡の争いが解決しなくても、小さな修理の跡だけは島へ着いた。




