海峡の低い灯
ハルノ島の東端では、灯台代わりに油皿を三つ並べていた。昔の高い灯塔は崩れ、石だけが残っている。霧の夜、皿の火は船からほとんど見えない。それでも島民は油を惜しまず灯した。
島長は灯を高くするため木の櫓を頼んだが、船大工は強い風に耐えられないと言った。男たちは石積みを試したものの、材料は波で丸くなった小石ばかりで固まりにくい。灯を目印に近づく船を危険へ招いてはならなかった。
ある夜、南の島から小舟が到着した。船頭は片腕に火傷を負い、積んだ食料の半分を失っていた。サルディアの巡察船に止められ、税を払えず逃げたという。島長は話を聞き、船頭が誰を見たかではなく、どの潮を使って来たか確かめた。
巡察船が追って来れば島も罰せられる。若い漁師たちは舟を隠そうとしたが、島長は負傷者を先に運ばせた。船の存在より、傷が膿む方が早い。
翌朝、灯の場所は少し下げられた。船を誘う灯ではなく、近づきすぎた船へ暗礁を知らせる灯に変える。海上で見える範囲は狭くなったが、島の入り江を知る者には十分だった。
油皿を守る当番の少女は、煙で目が痛くなり、夜の後半を弟へ代わってもらった。弟は眠気で皿を倒しそうになり、母親が急いで土を掛けた。灯を絶やさないには油だけでなく人手がいる。島長は漁に出ない老人たちも当番に含め、若い者が休めるようにした。海を照らす火が家の火事にならぬよう、皿の周りへ石の輪を増やした。
島の漁師は翌朝、皿の油を量り直した。無駄な燃え残りはなかった。
子どもたちは油皿の周りへ貝殻を並べた。三つの小さな火は、王国の船にも島の船にも同じように揺れた。




