港に来ない使者
ルーヴェの町会は、領主の印を押した船の扱いについて説明を求めた。だが返事を持つ使者は来なかった。橋は通れるのに、街道の途中にある小砦が通行人を調べ始めたからだ。河口で積荷を運んだ漁師には、敵の船を助けたという噂まで広がっていた。
町会の議長は、自分たちで領主へ行くと申し出た。しかし港の人々は、議長が不在になれば税の集計が止まると反対した。そこで商人と船大工と学校の教師が一人ずつ選ばれた。三人は同じ意見を持っていなかった。
商人は船を早く返したい。船大工は修理費を受け取りたい。教師は助けた子どもが罪に問われないよう願っている。途中の宿で三人は持参した文書を読み合い、矛盾があれば消さずに余白へ書くことにした。
小砦では、盾兵が門を塞いでいた。隊長は文書を一枚ずつ読み、答えを出す権限がないと伝えた。教師が子どもの名前だけでも取り消してほしいと頼むと、隊長は罰する者の名簿をまだ受け取っていないと言った。
三人は宿に戻り、領主の返答を待った。町会へは、使者が到着していない理由と、話せた相手の名を伝えた。
教師が宿の明かりで文書を直していると、使者を雇った商人が不安そうに覗いた。自分の名前が領主の怒りを買えば、港の店を失うかもしれない。教師は署名を外す代わりに、証言した事実だけ残す方法を尋ねた。誰も責任を負わなければ文書は弱くなるが、名前を書いた者だけが犠牲になってもいけない。三人は朝まで書き方を考えた。
港では漁師たちが次の潮を待っていた。国の境目は水面には描けないが、使者が一晩足止めされれば翌朝の市場に空く場所が生まれる。それを埋めようと、町の女たちが干物の棚を一段ずつ動かした。




