干潟の証人
河口の干潟で、軍の食料船が浅瀬へ乗り上げた。船腹には領主の印があるが、荷物を待つ兵は姿を見せなかった。潮が引くにつれ船は傾き、周囲の漁師たちは積荷の麦袋を岸へ運び始めた。
領主の巡察兵が来て盗みだと叫んだ。漁師の女頭領イェマは、濡れる前に降ろさなければ麦が腐ると答えた。袋には封印があり、誰も開けていない。巡察兵は剣を抜きかけ、泥に足を取られて膝をついた。
ネイは全ての袋に番号を付け、干潟を歩ける子どもに数えさせた。子どもは九十三まで数えたところで一つ足りないと気づいた。海へ落ちたのか盗まれたのか、誰にも分からない。
船頭が現れ、積荷を軍へ戻すよう頼んだ。彼の家族も領主の土地で暮らしている。イェマは船頭を責めず、湿った袋だけ町の倉へ運ぶ許可を求めた。領主の印を守ることと麦を守ることが、泥の上では別の仕事になっていた。
翌朝、干潟の沖で空の袋が一枚見つかった。漁師が引き上げると、紐はほどけていなかった。船底の破れから積荷が流れたらしい。巡察兵は盗難の報告を訂正し、役所の書記から嫌な顔をされた。
軍の巡察兵は濡れた袋を自分の宿へ運ぼうとしたが、イェマは人々の見える公倉を指定した。誰かが麦を減らせば疑いが互いへ向く。封印の破れた袋は別に置き、濡れた量も数えた。子どもは秤の数字をまだ読めない。それでも九十三から一つ欠けたことを覚えており、大人に何度も数え直させた。小さな証人を笑う者はいなかった。
ネイは子どもたちの数えた数字を保存した。軍の所有物を民が助けた証拠になる。だが船を立て直すには潮を待つしかなく、干潟には数人の見張りが残された。




