塩の価値
グラウゼンの市場では、塩一袋に対して麦二袋を求める商人が現れた。以前は反対だった。市場を監督する評議員アーネは秤を取り上げ、商人たちの話を別々に聞いた。
沿海地方からの荷は、南の通行所で二度止められていた。海辺の塩田が壊れたという話もあれば、新しい軍が道を押さえたという証言もある。どれも確かな数字を持っていない。
「足りないなら、値が上がるのは仕方ありません」
若い商人が言う。アーネは商いを禁じず、市場に残っていた塩を医療所と食肉加工場に分けて置くよう頼んだ。飢えを避けるための肉が腐れば、春にはもっと多くの人が困る。
肉職人は、塩を使わず乾燥させる方法を試していると話した。ただ、冬の湿った風では日数がかかり、家々に届ける前に傷むものもある。
街の入口へセリアの使者が到着した。南の関所には混成の兵がいること、別の海岸勢力が赤い円の旗を使っていることが報告された。評議会では兵の増派を求める声が上がる。
アーネは反対したのではなかった。ただ、道を通れるようにする職人の食料と、荷を運ぶ人足の賃金も計算に入れよと主張した。
市場には塩の値段を知らせる小さな鐘があった。値が変わると係が鳴らし、買いに来た人々が帳場へ集まる。その日は鐘が二度鳴った。商人同士の値引き競争ではなく、倉の数え直しで袋が見つかったためだった。アーネはその理由も張り紙にした。
それを読んだ肉職人は、翌日の仕入れ量を減らさずに済んだ。
夜、塩を求める人の列は市場の屋根の外へ伸びた。評議員は帳簿の最後に、値段ではなく残量を書き残した。買えない人が何人いるかは、その数字だけでは分からなかった。




